運動負荷試験の板書
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第12章「運動負荷試験」
この章は、運動負荷試験の目的、機器の選び分け、進め方、絶対的禁忌と相対的禁忌、中止を要する徴候、そして指導士の役割を扱います。健康運動実践指導者には科目として置かれていません。章ごとの出題数も章ごとの分量も公表された数字がないので、重さの目安は示していません。
覚える数字は少ない。枠組みで持つ
測るもの
2つ(耐容能・安全性)
禁忌
2段階(絶対・相対)
観察する場面
3つ(前・最中・直後)
- 測るもの:運動耐容能(どこまでできるか)と、安全性(そこまでの間に何が起きるか)
- 禁忌:絶対禁忌(実施しない)と、相対禁忌(医師が判断すれば条件つきでありうる)
- 観察する場面:開始前・負荷の最中・終了直後の回復期
①何のための試験か3節
測るのは「どこまで」と「その間に何が起きるか」
- 目的は運動耐容能の評価と安全性の確認
- この結果が運動処方の強度を決める根拠になる
- 運動負荷試験の目的:運動耐容能の評価と、負荷時の症状・心電図・血圧の反応からの安全性の確認。得られた結果が運動処方の強度を決める根拠になる
- 目的が違うもの:筋力や体脂肪率の測定/安静時の心電図と血圧だけを見るメディカルチェック
出典
値の大きさならトレッドミル、記録の安定なら自転車
- トレッドミルは歩行・走行。最大酸素摂取量が高く出やすい
- 自転車エルゴメータは座位。心電図・血圧の記録が安定
- 特徴を入れ替えた言い方に注意。動作が違えば値も違う
- トレッドミル:歩行・走行で全身の大きな筋群を使うため、最大酸素摂取量が高く出やすい
- 自転車エルゴメータ:座位で体重を支えず、上半身の揺れが小さいので心電図・血圧の記録が安定する。負荷はワット数で定量的に設定できる
出典
トレッドミルと自転車エルゴメータ。どこが違うか
- トレッドミル:歩行・走行/体重を支える/最大酸素摂取量が高く出やすい/上半身が動くので記録は乱れやすい
- 自転車エルゴメータ:座位で体重を支えない/ワット数で負荷を定量設定/心電図・血圧の記録が安定/脚に不安のある人にも実施しやすい
- ▲間違えやすいところ: 入れ替えた言い方に注意。体重を支えないのは自転車、値が高く出るのはトレッドミル
動画でこの図を見る(01:37)②試験のかたち4節
かけ方は3つ。いきなり最大にはしない
- 多段階漸増負荷法=一定の時間ごとに負荷を段階的に上げる
- 見たいのはどの負荷量で異常が現れるか。だから段階を追う
- 各段階を保つのは心拍数が落ち着くのを待つため
- かけ方は3つ。単一負荷/多段階漸増(連続法)/ランプ(直線的な漸増)
- 最大下負荷試験は最大努力を求めない。そのかわり推定値
- 負荷のかけ方には、単一負荷・多段階漸増(連続法)・ランプ(直線的な漸増)がある
- トレッドミルの代表的なプロトコルはBruce法。3分ごとに速度と傾斜を同時に上げる
- ▲間違えやすいところ: 「休息を挟まない」のは連続法の話。間欠法(段階のあいだに休息を入れる)も負荷の種類としてある
- 最大下負荷試験:最大努力を求めない範囲で止め、心拍数と負荷の関係から最大酸素摂取量を推定する。安全性は高いが誤差が残る
出典
- 出典:2021年改訂版心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(日本循環器学会/日本心臓リハビリテーション学会)
呼気ガスを測るから、ATが見える
- CPX=呼気ガスを分析しながら、ランプ(直線的な漸増)で負荷をかける
- 得られるのは最大酸素摂取量とAT(嫌気性代謝閾値)
- 心拍数だけでは代謝の切り替わり点は見えない
- CPX(心肺運動負荷試験)=呼気ガス分析をしながら運動負荷をかける検査
- 得られるもの:最大酸素摂取量(peak V̇O2)と嫌気性代謝閾値(AT)
- ATは呼気ガスの指標(換気量・二酸化炭素排出量の変化点)から判定する。血中の乳酸から求める乳酸閾値(LT)とは別の測定なので混ぜない
- ▲間違えやすいところ: 血液を採らずに呼気ガスだけで切り替わり点が取れるのがCPXの強み
- 推定した最大心拍数(220−年齢など)は誤差が大きい。可能なかぎり実測値を使うべきとされる
出典
- 出典:2021年改訂版心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン第2章3.2・3.3
手すりに預けて歩いた距離は、その人の力ではない
- 開始前に低速でベルトの乗り降りを練習しておく
- 手すりに体重を預けさせない。負荷が小さくなり、値が狂う
- 終わっても解散は保留。心拍数・血圧・心電図・自覚症状をみる
- 開始前:トレッドミルが初めての者には、いちばん低い速度でベルトの乗り降りを練習してもらう。装着の間に流れと終わり方を説明し、靴ひもも確かめる
- 手すりに体重を預けて歩かせると実際の負荷が小さくなり、運動耐容能を高く見積もることになる。手すりは軽く触れるためのもの
- 終了直後:回復期に不整脈・血圧の低下・虚血性の変化が出ることがあるため、解散を保留して観察する。急に止めず、軽い運動を続けながら段階的に戻す
出典
開始前・負荷の最中・終了直後。見るものが変わる
- 開始前:禁忌と当日の体調を確認(可否の判断は医師)/機器と救急の備えを点検/電極・血圧計を装着し、流れと終わり方を説明/低速で乗り降りを練習・手すりに体重を預けない
- 負荷の最中:一定の時間ごとに段階的に上げる/各段階で心拍数・血圧・心電図・自覚症状/段階を保って心拍数が落ち着くのを待つ/危険な徴候が出たら中止
- 終了直後:解散を保留して一定時間観察/心拍数・血圧・心電図・自覚症状/急に止めず、軽い運動を続けながら段階的に戻す
- ▲間違えやすいところ: 事故は負荷の最中だけでなく、終わった直後にも起こる
動画でこの図を見る(03:57)③禁忌4節
絶対的禁忌は「やらない」。相対的禁忌は「条件つき」
- 絶対的禁忌=危険が高く、実施してはいけない状態(9項目)
- 安定している慢性疾患は禁忌ではない。むしろ評価する意義がある
- 相対的禁忌は、医師が判断すれば条件つきでありうる
- 覚え方:絶対的禁忌に並ぶのは「急性」「コントロール不良」「症候性」のもの、それに「意思疎通の行えない精神疾患」
- ▲間違えやすいところ: 精神面は2つに分かれる。意思疎通が行えないなら絶対的、負荷が十分行えない程度なら相対的
- ▲間違えやすいところ: ある時点で禁忌でも、病状の変化で後に適応となることがある。再評価を行うべきとされている
出典
- 出典:2021年改訂版心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン表23
絶対的禁忌・相対的禁忌・中止を要する徴候
- 絶対的禁忌(実施しない・9項目):2日以内の急性心筋梗塞/内科的治療で安定していない不安定狭心症/自覚症状や血行動態の異常をきたすコントロール不良の不整脈/症候性の重症大動脈弁狭窄症/コントロール不良の症候性心不全/急性の肺塞栓/急性の心筋炎・心膜炎/急性大動脈解離/意思疎通の行えない精神疾患
- 相対的禁忌(条件つきでありうる・8項目):左冠動脈主幹部の狭窄/中等度の狭窄性弁膜症/電解質異常/重症高血圧(原則として収縮期>200mmHgまたは拡張期>110mmHg)/頻脈性不整脈または徐脈性不整脈/肥大型心筋症またはその他の流出路狭窄/運動負荷が十分行えないような精神的または身体的障害/高度房室ブロック
- 相対的禁忌の扱い:得られる情報の価値が危険を上回ると医師が判断すれば実施されることがある。可否を決めるのは医師
- 中止を要する徴候は4つのまとまりで示されている。症状(狭心痛・呼吸困難・失神・めまい・ふらつき・下肢疼痛)/徴候(チアノーゼ・顔面蒼白・冷汗・運動失調)/血圧(上昇不良ないし進行性低下・225mmHg以上の異常な上昇)/心電図(明らかな虚血性ST-T変化・調律異常・Ⅱ〜Ⅲ度の房室ブロック)
- 禁忌ではないもの:高齢であること/左室駆出率の低下/心拍数コントロールが良好な不整脈。それ自体では禁忌にならないとされている
動画でこの図を見る(04:50)出典
- 出典:禁忌=2021年改訂版心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(日本循環器学会/日本心臓リハビリテーション学会)表23・表24/中止基準=同2012年改訂版表10
9と8と4。数ではなく、並ぶものの性質で引く
- 絶対的(9)=急性/コントロール不良/症候性+意思疎通が行えない精神疾患
- 相対的(8)=医師が判断すれば条件つき(左主幹部・重症高血圧など)
- 中止(4群)=症状・徴候・血圧・心電図
- ここは直前の図(絶対的禁忌・相対的禁忌・中止を要する徴候の表)を言葉で持ち帰れるようにしたもの。表の全項目は、その図のところに挙げてある
- 絶対的禁忌9項目に共通する性質:急性(2日以内の急性心筋梗塞・急性の肺塞栓・急性の心筋炎や心膜炎・急性大動脈解離)/コントロール不良(不安定狭心症・コントロール不良の不整脈・コントロール不良の症候性心不全)/症候性(症候性の重症大動脈弁狭窄症)。これに意思疎通の行えない精神疾患が加わる
- 相対的禁忌の重症高血圧は「原則として収縮期>200mmHgまたは拡張期>110mmHg」。負荷試験中の中止基準の225mmHgとは別の数字なので、混ぜない
出典
上がり方がおかしくても、下がっても、止める
- 正常は心拍数・収縮期血圧が段階的に上昇。拡張期はほぼ一定
- 上昇不良・進行性の低下、そして225mmHg以上の異常な上昇が中止基準
- 正常を知らないと、異常も見抜けない
- 正常な反応:心拍数と収縮期血圧が段階的に上昇/拡張期血圧はほぼ一定/呼吸数・換気量も増える
- 血圧に関する中止基準:収縮期血圧の上昇不良ないし進行性低下/異常な血圧上昇(225mmHg以上)
- ▲間違えやすいところ: 「収縮期血圧が上がる=正常」ではない。上限がある
出典
- 出典:心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2012年改訂版)表10運動負荷の中止基準
④指導士の持ち場2節
助手としてはたらく。診断はしない
- 担うのは準備・装着の補助・観察・救急の備え
- 実施の可否・結果の最終判定・薬の内容は医師
- 救急の機器・医薬品は備えの重要性が目標。運用ではすぐ使える場所・共有
- 財団が公開している「健康運動指導士養成講習会テキスト学習目標」(令和8年版)の第12章には、運動負荷試験の目的・適応・禁忌・中止基準を理解し、実際を習得して助手としてはたらくことができること、救急蘇生の機器と医薬品を備えることの重要性を理解することが挙げられている
- 医師が行うこと:実施の可否の判断/結果の最終判定/診断の説明/薬の内容。どこまでが指導士の業務かという役割範囲は法令の解釈にあたり、一律には線を引けない。確かなのは「診断を行うのは医師」という線
出典
「異常なし」は、その日・その負荷までの話
- 耐容能は日常の動作に必要な強度と見比べて読む
- 最高の負荷量は限界の値。毎回の目標には置かない
- 異常なし=その日の負荷の範囲で異常が出なかっただけ
- 運動耐容能は、日常の動作や仕事に必要な強度と見比べて、安全に行える範囲を考える材料にする
- 試験で到達した最高の負荷量は限界の値。毎回の目標には置かず、続ける強度はその下に置く。同年代の平均との比較も目安にとどまる
- 「異常なし」は、その日かけた負荷の範囲で異常が出なかったという意味で、将来の保証ではない。実施前のメディカルチェックと問診は省けない
出典
この章の要点
- 2つ測る=どこまでできるか/その間に何が起きるか
- 2段階の禁忌=絶対的はやらない/相対的は医師の判断で条件つき
- 3場面を観る=前・最中・直後。見るのは心拍数・血圧・心電図・自覚症状
- 中止は症状・徴候・血圧・心電図の4群。血圧は下がっても上がりすぎても
読んだら、解いて確かめる
聞いて分かったつもりのところは、解くとはっきりします。間違えた問題だけが自動で復習に戻り、2回連続で正解すると外れます。
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健康運動指導士の板書(公式テキストの章立て順)。
公式テキストの本文は使っていません。章題とページ数は目次から転記した事実、内容は公的機関の公開資料と教科書水準の一般知識にもとづいています。章ごとの出題数は公表されていません。