運動傷害と予防全10問・正解と解説つき
健康運動指導士 ・ 公式テキスト第7章 ・ 分量 4%
内科的急性・慢性運動障害とその予防、外科的損傷(頭部・頸部・上肢・体幹)、外科的損傷(腰部・下肢)。
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- Q01#ks-ij-001
日本救急医学会「熱中症診療ガイドライン2024」における重症度分類の改訂点はどれか。
- 1従来のⅢ度を廃止し、Ⅱ度とⅣ度の2区分に整理した
- 2Ⅳ度は深部体温を用いず、収縮期血圧の値だけで定義された
- 3現場で用いるqⅣ度は、深部体温を測定してから判定することとされた
- 4従来のⅢ度のうち特に重症の群を切り出し、最重症群としてⅣ度を新たに設けた正解
Answer
正解 4:従来のⅢ度のうち特に重症の群を切り出し、最重症群としてⅣ度を新たに設けた
熱中症診療ガイドライン2024では、Ⅰ度・Ⅱ度はそれまでの分類を維持したうえで、従来Ⅲ度としていた重症群の中に特に注意を要する最重症群があるとして、これを切り出しⅣ度を新たに設けた。Ⅳ度は深部体温と意識状態によって定義される。「従来のⅢ度を廃止し、Ⅱ度とⅣ度の2区分に整理した」は誤りで、Ⅲ度は廃止されておらず、Ⅳ度に該当しないものがⅢ度として残る。「Ⅳ度は深部体温を用いず、収縮期血圧の値だけで定義された」も誤りで、Ⅳ度は深部体温40.0℃以上かつ意識状態(GCS8以下)で定義される。「現場で用いるqⅣ度は、深部体温を測定してから判定する」も誤りで、qⅣ度は現場や搬送中に深部体温を測らずに判断できるよう、表面体温や皮膚の熱感と意識状態で判定する指標である。
HINT 「熱中症はⅠ〜Ⅲ度」は2024年より前の分類。版を確認せずに答えると取り違える。
- Q02#ks-ij-002
運動中に熱中症が疑われる者への現場での対応として最も適切なものはどれか。
- 1体温を下げすぎないよう、冷却は行わずに安静のみを保って回復を待つ
- 2意識がもうろうとしていても、まず水分を飲ませることを最優先する
- 3けいれんが起きている場合は、身体を強く押さえて動きを止める
- 4涼しい場所へ移し、衣服をゆるめて身体を冷やし、意識がはっきりしていれば水分と塩分を摂らせる正解
Answer
正解 4:涼しい場所へ移し、衣服をゆるめて身体を冷やし、意識がはっきりしていれば水分と塩分を摂らせる
熱中症が疑われる場合は、まず涼しい場所へ移し、衣服をゆるめて身体を冷やし、意識がはっきりしていれば水分と塩分を摂らせる。改善しない場合や意識に異常がある場合は医療機関へつなぐ。「冷却は行わずに安静のみを保って回復を待つ」は誤りで、冷却は現場で行うべき最優先の処置の一つである。「意識がもうろうとしていても、まず水分を飲ませる」は危険で、意識に異常がある場合は誤嚥のおそれがあるため経口での摂取をさせず、ただちに救急要請する。「けいれんが起きている場合は、身体を強く押さえて動きを止める」も誤りで、押さえつけることは傷害につながるため行わない。
HINT 「自分で水が飲めるかどうか」が現場での分かれ目。飲めないなら救急要請の段階。
- Q03#ks-ij-003
運動中の突然死に関する説明として正しいものはどれか。
- 1運動中の突然死は運動強度と無関係に起こるため、強度の管理では予防できない
- 2既往歴のない者には起こらないため、問診による把握は不要である
- 3中高年では虚血性心疾患が主な原因となり、若年者では心筋症など基礎心疾患によるものが多い正解
- 4中高年・若年者を問わず、脳血管疾患が最も多い原因である
Answer
正解 3:中高年では虚血性心疾患が主な原因となり、若年者では心筋症など基礎心疾患によるものが多い
運動中の突然死は、中高年では虚血性心疾患が主な原因となり、若年者では肥大型心筋症などの基礎心疾患によるものが多いとされる。年代によって背景が異なるため、メディカルチェックで注目すべき点も変わる。「脳血管疾患が最も多い原因である」は誤りで、最も多いのは心臓に由来するものである。「運動強度と無関係に起こるため、強度の管理では予防できない」は誤りで、慣れない高強度の運動でリスクが高まることが知られており、強度の管理は予防の中心にある。「既往歴のない者には起こらない」も誤りで、自覚症状のないまま経過する例があるため問診とメディカルチェックが重要になる。
HINT 若年者の突然死は「無症状の心筋症」が背景にありうる。家族歴と失神の既往を問診で押さえる。
- Q04#ks-ij-004
運動中に生じた過換気症候群への対応として最も適切なものはどれか。
- 1運動を中止させて落ち着かせ、ゆっくりとした呼吸を促す正解
- 2紙袋を口と鼻に密着させ、袋の中の空気だけを繰り返し吸わせる
- 3換気量を増やすため、深く速い呼吸を続けるよう促す
- 4水分を大量に摂らせて、血液中の二酸化炭素を補う
Answer
正解 1:運動を中止させて落ち着かせ、ゆっくりとした呼吸を促す
過換気症候群は不安や緊張を背景に換気が過剰になり、血液中の二酸化炭素が減ってしびれや手指のけいれんなどが生じる状態である。対応は運動を中止させて落ち着かせ、ゆっくりとした呼吸を促すことが基本になる。「紙袋を口と鼻に密着させ、袋の中の空気だけを繰り返し吸わせる」はかつて行われたが、低酸素を招く危険があるため現在は推奨されない。「深く速い呼吸を続けるよう促す」は症状を悪化させる方向である。「水分を大量に摂らせて、血液中の二酸化炭素を補う」は誤りで、水分摂取で二酸化炭素が補われることはない。
HINT ペーパーバッグ法はもう勧められていない。ここは古い知識のまま残りやすい論点。
- Q05#ks-ij-005
オーバートレーニング症候群の説明として正しいものはどれか。
- 1運動による疲労が十分に回復しないまま蓄積し、競技成績や体調の低下が慢性的に続く状態正解
- 21回の運動によって生じる一時的な筋肉痛と疲労感のこと
- 3運動を中止したあとに筋力と持久力が低下していく状態
- 4急激に高強度の運動を行ったときに生じる筋の損傷と腎障害のこと
Answer
正解 1:運動による疲労が十分に回復しないまま蓄積し、競技成績や体調の低下が慢性的に続く状態
オーバートレーニング症候群は、運動による疲労が十分に回復しないまま蓄積し、パフォーマンスの低下、易疲労感、睡眠障害、安静時心拍数の上昇、意欲の低下などが慢性的に続く状態を指す。回復には長い休養を要することがあるため、予防が重要になる。「1回の運動によって生じる一時的な筋肉痛と疲労感」は通常の運動後の反応であり、症候群ではない。「運動を中止したあとに筋力と持久力が低下していく状態」は可逆性の原理による脱トレーニングの説明である。「急激に高強度の運動を行ったときに生じる筋の損傷と腎障害」は横紋筋融解症の説明にあたる。
HINT 安静時心拍数の上昇と睡眠の質の低下は早期の手がかり。指導記録に残しておくと気づける。
- Q06#ks-ij-006
スポーツ活動中に頭部を強打し、脳振盪が疑われる場合の対応として最も適切なものはどれか。
- 1本人が復帰を希望する場合は、本人の判断を優先して復帰させる
- 2意識が戻っていても、その日は活動に復帰させず医療機関の評価を受けさせる正解
- 3意識がすぐに戻り歩けるようであれば、同日中に活動へ復帰させてよい
- 4頭痛が続いている場合に限って活動を中止し、頭痛がなければ継続させる
Answer
正解 2:意識が戻っていても、その日は活動に復帰させず医療機関の評価を受けさせる
脳振盪が疑われる場合は、意識が戻っていてもその日は活動に復帰させず、医療機関の評価を受けさせるのが原則である。回復しきらないうちに再び頭部に衝撃を受けると重篤な状態に至るおそれがあるためで、段階的な復帰の手順を踏む必要がある。「意識がすぐに戻り歩けるようであれば、同日中に活動へ復帰させてよい」はこの原則に反する。「頭痛が続いている場合に限って活動を中止し」も誤りで、頭痛がなくても症状が遅れて現れることがある。「本人の判断を優先して復帰させる」も誤りで、本人は症状を過小に申告しがちであり、判断を本人に委ねてはならない。
HINT 合言葉は「疑わしきは退場させる」。その日のうちに戻さないことが最大の予防になる。
- Q07#ks-ij-007
肩関節周辺のスポーツ障害に関する説明として正しいものはどれか。
- 1肩関節は可動域が狭く安定性が高いため、繰り返し動作による障害はほとんど生じない
- 2肩関節の障害はすべて一回の外力による外傷であり、使いすぎによるものはない
- 3肩の痛みが出た場合は、可動域を保つため痛みを我慢して同じ動作を続ける
- 4投球やオーバーヘッド動作の繰り返しにより、回旋筋腱板や関節唇に障害が生じやすい正解
Answer
正解 4:投球やオーバーヘッド動作の繰り返しにより、回旋筋腱板や関節唇に障害が生じやすい
肩関節は可動域が大きいぶん骨性の安定性に乏しく、投球やオーバーヘッド動作を繰り返すことで回旋筋腱板や関節唇に障害が生じやすい。「可動域が狭く安定性が高いため、繰り返し動作による障害はほとんど生じない」は肩関節の構造の理解が逆である。「すべて一回の外力による外傷であり、使いすぎによるものはない」も誤りで、むしろ使いすぎによる慢性の障害が多い。「痛みを我慢して同じ動作を続ける」は誤りで、痛みは動作の中止と原因の見直しを促す信号である。
HINT 肩は「自由度と引き換えに安定性を捨てた関節」。だから周囲の筋が支えを担う。
- Q08#ks-ij-008
腰痛の予防を目的とした動作指導として最も適切なものはどれか。
- 1荷物は体から遠ざけて持つことで、腰への負担を減らす
- 2腰痛がある間は、いかなる運動も行わず床上での安静を続ける
- 3床の物を持ち上げるときは、腰を丸めずに股関節と膝関節を曲げ、荷物を体に近づけて持つ正解
- 4床の物を持ち上げるときは、膝を伸ばしたまま腰だけを曲げて素早く持ち上げる
Answer
正解 3:床の物を持ち上げるときは、腰を丸めずに股関節と膝関節を曲げ、荷物を体に近づけて持つ
物を持ち上げる際は、腰を丸めずに股関節と膝関節を曲げて重心を下げ、荷物を体に近づけて持つことで腰椎への負担を減らせる。荷物が体から遠いほどモーメントアームが長くなり、腰部にかかる力が大きくなる。「膝を伸ばしたまま腰だけを曲げて素早く持ち上げる」は腰椎に大きな負担をかける典型的な動作である。「荷物は体から遠ざけて持つことで、腰への負担を減らす」は力学的に逆である。「いかなる運動も行わず床上での安静を続ける」も誤りで、腰痛に対しては過度の安静を避け、痛みの範囲で活動を続けることが勧められている。
HINT 腰痛に「絶対安静」はもう勧められていない。動ける範囲で動くほうが経過がよい。
- Q09#ks-ij-009
膝前十字靱帯損傷に関する説明として正しいものはどれか。
- 1男性に著しく多く、女性ではほとんど生じない
- 2受傷しても関節の不安定性は生じないため、そのまま運動を継続してよい
- 3ジャンプの着地や急な方向転換のような非接触の場面でも生じ、女性に多い傾向がある正解
- 4相手との接触がある場面でのみ生じ、非接触の動作では起こらない
Answer
正解 3:ジャンプの着地や急な方向転換のような非接触の場面でも生じ、女性に多い傾向がある
膝前十字靱帯損傷は、ジャンプの着地や急な方向転換、急停止といった非接触の場面でも多く生じ、女性に多い傾向があることが知られている。着地時の膝が内側へ入る動作(ニーイン)が危険因子とされ、着地の動作指導が予防につながる。「相手との接触がある場面でのみ生じ」は誤りで、非接触による受傷が相当の割合を占める。「男性に著しく多く、女性ではほとんど生じない」は傾向が逆である。「受傷しても関節の不安定性は生じない」も誤りで、膝崩れなどの不安定性が生じ、放置すると半月板や軟骨の損傷につながる。
HINT 予防できる余地が大きいのは「非接触型」。着地とカッティングの動作を直せば減らせる。
- Q10#ks-ij-010
足関節捻挫に関する説明として正しいものはどれか。
- 1腫れが引けば靱帯は完全に治っているため、機能訓練は不要である
- 2内反を強制されて外側の靱帯を損傷する型が多く、再発の予防にはバランス能力の回復が重要である正解
- 3外反を強制されて内側の靱帯を損傷する型が大半を占める
- 4一度受傷すれば靱帯が硬く強くなるため、再発することはない
Answer
正解 2:内反を強制されて外側の靱帯を損傷する型が多く、再発の予防にはバランス能力の回復が重要である
足関節捻挫は足部が内側へひねられる内反を強制されて外側の靱帯(前距腓靱帯など)を損傷する型が多い。受傷後は関節の位置感覚とバランス能力が低下し再発しやすくなるため、これらの回復を含めた機能訓練が予防上重要になる。「外反を強制されて内側の靱帯を損傷する型が大半を占める」は頻度が逆である。「一度受傷すれば靱帯が硬く強くなるため、再発することはない」は誤りで、捻挫は再発しやすい傷害の代表である。「腫れが引けば靱帯は完全に治っているため、機能訓練は不要」も誤りで、腫れの消失と機能の回復は一致しない。
HINT 「捻挫だから軽い」は誤解。再発を繰り返すと不安定性が残り、将来の変形性関節症につながる。
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