運動指導の心理学的基礎全11問・正解と解説つき
健康運動実践指導者 ・ 公式テキスト第5章 ・ 分量 5%
運動行動に関わる社会・心理・環境的要因、運動の心理的効果とストレス、行動変容技法とHAPA、指導者に必要な資質、ラポール・傾聴と共感・OARS・チェンジトーク、集団指導。
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- Q01#kj-ps-001
行動変容ステージモデルにおいて、「6か月以内に運動を始めるつもりがある」段階はどれか。
- 1無関心期(前熟考期)
- 2関心期(熟考期)正解
- 3準備期
- 4実行期
- 5維持期
Answer
正解 2:関心期(熟考期)
行動変容ステージモデルでは、無関心期(6か月以内に行動を変えるつもりがない)、関心期(6か月以内に始めるつもりがある)、準備期(1か月以内に始めるつもりがある、あるいは少しずつ始めている)、実行期(始めてから6か月未満)、維持期(6か月以上継続している)の5段階に分けられる。「6か月以内に始めるつもりがある」は関心期にあたる。ステージによって有効な働きかけが異なるため、相手が今どの段階にいるかを見極めることが指導の出発点になる。
HINT 6か月以内なら関心期、1か月以内なら準備期。始めて6か月で維持期へ。
- Q02#kj-ps-002
自己効力感(セルフ・エフィカシー)を高める情報源のうち、最も影響が大きいとされるものはどれか。
- 1自分で実際にやってみて、できた経験(遂行行動の達成)正解
- 2他人がうまくやっているのを見ること(代理的経験)
- 3他人から励まされること(言語的説得)
- 4体調がよいと感じること(生理的・情動的状態)
- 5専門家の資格を確認すること
Answer
正解 1:自分で実際にやってみて、できた経験(遂行行動の達成)
自己効力感の情報源は、遂行行動の達成(自分でやってできた経験)、代理的経験(他人の成功を見る)、言語的説得(励まされる)、生理的・情動的状態(体調や気分)の4つとされ、このうち最も影響が大きいのは自分自身の成功体験である。だからこそ運動指導では、確実に達成できる小さな目標から始めて成功体験を積ませることが有効になる。「専門家の資格を確認すること」は4つの情報源のいずれにも含まれない。
HINT 小さくても「できた」が一番効く。だから目標は低めから刻む。
- Q03#kj-ps-003
内発的動機づけにあたるものはどれか。
- 1医師に叱られたくないから運動する
- 2運動そのものが楽しいから運動する正解
- 3減量しないと罰金があるから運動する
- 4家族に褒められたいから運動する
- 5景品がもらえるから運動する
Answer
正解 2:運動そのものが楽しいから運動する
内発的動機づけは、その行動そのものから得られる楽しさや充実感によって行動が支えられている状態を指す。「運動そのものが楽しいから」はこれにあたる。叱責の回避、罰金、他者からの称賛、景品はいずれも行動の外側にある要因であり、外発的動機づけに分類される。外発的動機づけも行動の開始には有効だが、その要因が失われると行動も止まりやすい。継続を目指すなら、進めながら内発的動機づけへ移していく働きかけが重要になる。
HINT 報酬・罰・他者の評価が絡めば外発的。行動そのものが目的なら内発的。
- Q04#kj-ps-004
運動の継続を支援する目標設定として、最も適切なものはどれか。
- 1「毎日必ず1時間走る」という高い目標を立てる
- 2「週2回、20分の速歩を行う」という具体的で達成可能な目標を立てる正解
- 3「健康になる」という大きな目標だけを立てる
- 4「いつか運動を始める」という期限を定めない目標を立てる
- 5「他の参加者より多く運動する」という他者との比較で目標を立てる
Answer
正解 2:「週2回、20分の速歩を行う」という具体的で達成可能な目標を立てる
目標は「何を・どのくらい・いつ行うか」が具体的で、かつ本人が達成できる水準にあることが、成功体験を積ませるうえで重要になる。「週2回、20分の速歩」はこの条件を満たす。「毎日必ず1時間走る」は運動習慣のない人には高すぎ、達成できない経験が自己効力感を下げる。「健康になる」は具体性がなく達成の判断ができない。「いつか始める」は期限がなく行動に結びつかない。他者との比較を目標に置くと、体力差によって達成が左右され、継続の支えになりにくい。
HINT 「何を・どのくらい・いつ」が言えて、本人が達成できる水準かどうか。
- Q05#kj-ps-005
運動を中断してしまった対象者への対応として、最も適切なものはどれか。
- 1意志が弱いことを指摘し、反省を促す
- 2中断は誰にでも起こることと伝え、再開しやすい内容に調整する正解
- 3遅れを取り戻すため、以前より高い強度で再開させる
- 4中断の話題には触れず、記録だけを確認する
- 5継続できないのであれば指導を終了すると伝える
Answer
正解 2:中断は誰にでも起こることと伝え、再開しやすい内容に調整する
運動の中断(逆戻り)は行動変容の過程でしばしば起こるものであり、失敗ではなく想定内の出来事として扱う。中断が誰にでも起こることを伝えて自責感を和らげ、何が妨げになったかを一緒に確認したうえで、再開しやすい内容に調整することが有効である。意志の弱さを指摘することや指導終了を告げることは、自己効力感を下げて再開をさらに遠ざける。以前より高い強度での再開は負担が大きく、再び中断する可能性を高める。中断に触れずに記録だけ確認しても、原因は解消されない。
HINT 逆戻りは想定内。責めずに、ハードルを下げて戻す。
- Q06#kj-ps-006
運動の継続における「ソーシャルサポート」の例として、最も適切なものはどれか。
- 1運動用のウェアを新しく購入する
- 2家族や仲間が一緒に歩いたり、励ましたりする正解
- 3運動の効果に関する書籍を読む
- 4スポーツクラブの会費を前払いする
- 5歩数計で毎日の歩数を記録する
Answer
正解 2:家族や仲間が一緒に歩いたり、励ましたりする
ソーシャルサポートは、周囲の人から得られる支援を指し、一緒に運動する・励ます・送り迎えをするといった行動が該当する。他者が関わっているという事実そのものが継続を支える力になる。ウェアの購入や会費の前払いは環境づくりや心理的なコミットメントの手段、書籍を読むことは知識の獲得、歩数の記録はセルフモニタリングにあたり、いずれも有効な工夫ではあるが他者からの支援ではない。
HINT 他者が関わっている、という事実そのものが継続を支える。
- Q07#kj-ps-007
HAPA(健康行動プロセスアプローチ)の考え方として、正しいものはどれか。
- 1意図が固まるまでの過程と、意図を行動に移して続ける過程を分け、その間を計画がつなぐと考える正解
- 2行動を変えてからの経過期間を基準に5つの段階を設け、段階ごとに働きかけを変えると考える
- 3行動への態度、周囲の期待の受け取り方、実行できそうかの感覚の3つから意図を予測すると考える
- 4行動した直後に与えられる結果によって、その行動が増えたり減ったりすると考える
- 5他者が行動している様子を観察して手本とすることで、新しい行動が身につくと考える
Answer
正解 1:意図が固まるまでの過程と、意図を行動に移して続ける過程を分け、その間を計画がつなぐと考える
HAPAはシュワルツァーが提唱した健康行動の理論で、行動の変化を「意図が形成されるまでの過程(動機づけ相)」と「意図を実際の行動に移し、維持する過程(意志相)」の2つに分けて捉える。動機づけ相では危険性の認知・結果への期待・自己効力感が意図の形成を促し、意志相では、いつ・どこで・どのように行うかを決める行動計画と、妨げが生じたときの対処をあらかじめ決めておく対処計画が、意図はあるのに行動に移せないというずれ(意図と行動のギャップ)を埋める役割を果たす。「経過期間を基準に5つの段階を設ける」のは行動変容ステージモデルの説明であり、期間による段階分けはHAPAの枠組みではない。「態度、周囲の期待の受け取り方、実行できそうかの感覚の3つから意図を予測する」のは計画的行動理論の説明で、HAPAは周囲の期待(主観的規範)を構成要素に含めない。「行動した直後に与えられる結果によって行動が増減する」のはオペラント条件づけ、「他者の様子を観察して手本とすることで新しい行動が身につく」のは観察学習(モデリング)の説明であり、いずれもHAPAが示す二段階の過程を述べたものではない。
HINT 意図をつくるまでと、意図を行動に変えるまで。その橋渡しをするのが計画。
- Q08#kj-ps-008
動機づけ面接で用いられる基本的な面接技術「OARS」の組み合わせとして、正しいものはどれか。
- 1開かれた質問・是認・聞き返し・要約正解
- 2開かれた質問・是認・聞き返し・助言
- 3開かれた質問・是認・説得・要約
- 4開かれた質問・指示・聞き返し・要約
- 5閉じた質問・是認・聞き返し・要約
Answer
正解 1:開かれた質問・是認・聞き返し・要約
OARSは動機づけ面接で用いられる4つの基本技術の頭文字で、Open question(開かれた質問)、Affirming(是認)、Reflective listening(聞き返し)、Summarizing(要約)を指す。開かれた質問は「はい・いいえ」で終わらない問いかけによって相手が自分の言葉で語れるようにするもの、是認は相手の強みや努力、変化につながる行いを認めて言葉にするもの、聞き返しは相手の言ったことを言い換えたり気持ちを汲んで返して理解を確かめるもの、要約はそれまでの話をまとめて現在地とこれから向かう先を共有するものである。「助言」「説得」「指示」を含む組み合わせが誤りなのは、動機づけ面接が指導者の側から正解を示して押すのではなく、相手自身の中にある変わりたい気持ちを引き出す進め方をとるためで、これらはOARSに位置づけられていない。「閉じた質問」を含む組み合わせも誤りで、OARSに数えられているのは閉じた質問ではなく開かれた質問である。
HINT オールズ=開かれた質問・是認・聞き返し・要約。指導者が押す技術は入らない。
- Q09#kj-ps-009
運動指導の面談で対象者が話した次の発言のうち、チェンジトークにあたるものはどれか。
- 1「階段を使うくらいなら、今日からでもできそうです」正解
- 2「ジムの会員証はもう持っているので、いつでも通える状態です」
- 3「今のままの生活でも、特に困っていることはありません」
- 4「前にもジム通いを試しましたが、私には無理だと思います」
- 5「運動が健康にいいことは、よく耳にしますね」
Answer
正解 1:「階段を使うくらいなら、今日からでもできそうです」
チェンジトークは、変わる方向に向かう考えを本人が自分の言葉で述べた発言を指す。願望(〜したい)、能力(〜できそう)、理由(〜だから変えたい)、必要性(〜しなければ)といった準備の段階の発言と、宣言や具体的な着手、すでに踏み出した行動を表す実行の段階の発言に整理される。「階段を使うくらいなら、今日からでもできそうです」は自分にできそうだという能力についての発言で、チェンジトークにあたる。これに対し「今のままの生活でも、特に困っていることはありません」は変える必要を感じていないことの表明、「前にもジム通いを試しましたが、私には無理だと思います」は自分にはできないという見通しの表明であり、いずれも現状にとどまる方向の発言(維持トーク)である。「ジムの会員証はもう持っているので、いつでも通える状態です」は、環境が整っていることの説明にとどまり、自分が変わりたい・変われるという本人の意思や見通しを述べたものではないため、チェンジトークには数えない。「運動が健康にいいことは、よく耳にしますね」は一般論の確認にとどまり、自分自身の変化について述べた発言ではない。指導者の役割は、こうした発言を聞き分け、チェンジトークが出たところを是認し聞き返して広げていくことである。
HINT 自分が変わる方向に向かう、本人自身の言葉かどうか。一般論や「できない」は違う。
- Q10#kj-ps-010
運動指導における「共感」の説明として、最も適切なものはどれか。
- 1相手の立場に立ち、相手が感じていることを相手の見方のまま理解しようとすること正解
- 2相手の話を聞いて、自分も相手と同じようにつらい気持ちになること
- 3相手の考えに賛成し、指導の内容を相手の希望どおりに変えること
- 4相手の話した内容を、専門的な知識に照らして解釈して説明すること
- 5相手の困っていることに対し、解決につながる助言をすばやく返すこと
Answer
正解 1:相手の立場に立ち、相手が感じていることを相手の見方のまま理解しようとすること
共感(共感的理解)は、相手の立場に立って、相手が感じていることを相手自身の見方の枠組みのまま理解しようとする態度である。ロジャーズは傾聴が成り立つ条件として、共感的理解、無条件の肯定的関心(善悪や好き嫌いの評価を入れずに聴くこと)、自己一致(聴き手が相手にも自分にも真摯であること)の3つを挙げており、共感はその中心に置かれる。「自分も相手と同じようにつらい気持ちになること」は同情であり、相手の感情に巻き込まれた状態では冷静な支援が難しくなる。共感は「あたかも相手のように」理解することであって、自分が同じ感情に陥ることではない。「相手の考えに賛成し、指導の内容を希望どおりに変えること」は同意であり、理解することと要求をそのまま受け入れることは別である。「専門的な知識に照らして解釈して説明すること」は解釈であり、相手の見方を指導者の枠組みに置き換えている点で共感とは異なる。「解決につながる助言をすばやく返すこと」は助言で、相手が語り終える前に正解を示そうとすると、かえって話す気持ちをそいでしまう。
HINT 「あたかも相手のように」理解する。同情・同意・解釈・助言とは別のもの。
- Q11#kj-ps-011
集団を対象とした運動指導で、グループダイナミクス(集団力学)が働くことによって期待できることはどれか。
- 1参加者同士が互いに影響し合い、一人で行うよりも参加の継続が支えられる正解
- 2参加者同士が体力を比べ合うことで、体力の低い人ほど強く動機づけられる
- 3参加者ごとに運動の強度を細かく調整し、それぞれの体力に合わせやすくなる
- 4指導者が一人の参加者に向き合える時間が増え、動作の修正が行き届く
- 5参加者の技能の差が縮まり、全員が同じ動作を同じ強度で行えるようになる
Answer
正解 1:参加者同士が互いに影響し合い、一人で行うよりも参加の継続が支えられる
集団で運動を行うと、参加者同士の励まし合い、他の参加者が続けている様子を見ることによる刺激、その場に居場所があるという所属感といった相互作用が働き、一人で行うよりも参加が続きやすくなる。これが集団指導の大きな利点であり、グループダイナミクスを活かすとは、こうした相互作用が生まれる場をつくることを指す。「体力を比べ合うことで体力の低い人ほど強く動機づけられる」は逆で、比較が前に出ると体力の低い人は劣等感を抱き、参加をやめる方向に向かいやすい。「運動の強度を細かく調整してそれぞれの体力に合わせやすくなる」ことと「指導者が一人の参加者に向き合える時間が増える」ことは、いずれも個別指導の利点であり、集団指導ではむしろ制約となる点である。「技能の差が縮まり全員が同じ動作を同じ強度で行えるようになる」も誤りで、同じ内容を行っても個人差は残るため、指導者は動きの大きさや回数に選択肢を用意し、各自が調整できる幅を持たせる必要がある。
HINT 集団の強みは、参加者同士が影響し合うこと。細かい個別対応は集団では難しくなる。
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