バイオメカニクスの板書
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第5回「力学の言葉—力・トルク・仕事とパワー」
この回は、動作を力学の言葉で言いなおす練習をします。質量と重さ、距離と変位・速さと速度、キネマティクスとキネティクス、力の分解、力積と運動量、仕事とパワー、トルクと偶力、慣性モーメントと角運動量、地面反力と摩擦力、支持基底面と重心、垂直跳びと曲走路までを、バーベルと跳躍の題材だけで見ます。領域ごとの出題数は公表されていないので、重さの目安は示していません。
数えるのは、この3つ
力学の言葉
4語
地面反力の分力
3方向
跳んだ高さを決める量
1つ
- 力学の言葉を引く4語=向き(ベクトルの量)・時間(力積とパワー)・回転(トルクと慣性モーメント)・床(地面反力と摩擦力)
- 地面反力は鉛直方向のほかに前後方向と左右方向の成分が生じ、三方向の分力として計測できる
- 踏切を離れたあとの跳躍の高さは、踏切で得た鉛直方向の初速度で決まる。空中では重力以外の力がほとんど働かない
①量をそろえる4節
質量と重さは、別の量
- 質量=物体そのものの量。場所で変わらない
- 重さ=質量×重力加速度。これは力の一種
- 「重い」は、質量の話か力の話かで分かれる
- 質量=物体そのものの量を表す量。測る場所が変わっても変わらない
- 重さ(重力)=質量に重力加速度をかけて得られる力であり、力の一種
- 日常語では同じものとして使われるが、力学では別の量として扱う
動きを記述するか、原因を扱うか
- キネマティクス(運動学)=位置・速度・加速度・角度など、動きそのものの記述を扱う
- キネティクス(運動力学)=力・トルク・力積・パワーなど、動きを生じさせたものを扱う
- 見分けは、その文で力やトルクが扱われているかどうか
向きを含む量と、含まない量
- 距離と速さ=大きさだけ/変位と速度=向きも含む
- バーを挙げて元へ戻せば変位は0。距離は0ではない
- 加速度は速度の変化。速さが同じでも向きが変われば生じる
- 距離と速さ=大きさだけを表す量
- 変位と速度=大きさに加えて向きを含む量
- 挙上して元の位置へ戻せば、移動した距離は残るが変位はゼロになる
- 加速度は速度の変化なので、速さが一定でも向きが変われば生じる
斜めの力は、2つに分けて読む
- 力は向きごとの成分に分けられる。斜めのままでは比べられない
- 傾いたレッグプレス=沿った成分と垂直な成分
- 角度を変えると、2つの成分の割合が変わる
- 力はベクトル量なので、向きごとの成分に分解して扱える
- 傾斜のあるレッグプレスでは、負荷の力をスレッドに沿った成分と、スレッドに垂直な成分に分けられる
- 押す動作に使われるのは、スレッドに沿った方向の成分
- スレッドの角度を変えると、2つの成分の割合が変わる
②時間でみる2節
力に時間をかけたぶんだけ、速度が変わる
- 力積=力×作用した時間
- 運動量=質量×速度。力積のぶんだけ変化する
- 踏切で増やせるのは力の大きさか押している時間
- 力積=力と、その力が作用した時間の積
- 運動量=質量と速度の積
- 加えた力積の分だけ運動量が変化する
- 同じ力積であれば、大きな力を短時間加えても、小さな力を長時間加えても、速度の変化は同じになる
同じ仕事を短い時間でやると、パワーが大きい
- 仕事=力×動いた距離。重さと高さが同じなら同じ
- パワー=仕事÷時間。速く挙げたほうが大きい
- 力×速度でも書ける。重さだけ・速さだけでは最大にならない
- 仕事=力と、その力の向きに動いた距離の積
- パワー(仕事率)=仕事を、要した時間で割った量。力と速度の積としても表せる
- 同じ重量を同じ高さまで挙上したとき、要した時間が短いほど大きくなる量はパワーであり、力でも仕事でもない
③回転でみる3節
回転させる量は、力ではなくトルク
- トルク=力×モーメントアーム(軸までの垂直距離)
- 同じ重さでも、軸から離れるほどトルクは大きくなる
- 偶力=合力はゼロ、回転だけが残る
- トルク(モーメント)=力と、回転軸から力の作用線までの垂直距離(モーメントアーム)の積
- 同じ力でもモーメントアームが長くなるほどトルクは大きくなる
- 偶力=大きさが等しく向きが反対の2つの力が、離れた平行な作用線に働く状態。合力はゼロになるが正味のモーメントは打ち消し合わずに生じ、その場で回転が起きる
回しにくさは、質量がどこにあるかで決まる
- 慣性モーメント=軸から質量が遠いほど大きく、回しにくい
- 同じトルクなら、小さいほど角加速度は大きい
- 用具を短く持つのは、ここを小さくする操作
- 慣性モーメント=回転軸から質量が遠くに分布するほど大きくなり、回転させにくくなる
- 同じトルクを加えたとき、慣性モーメントが小さいほど角加速度は大きくなり、回転の立ち上がりが速い
- 用具を短く持つ、四肢を畳むといった操作は、質量を回転軸へ近づけて慣性モーメントを小さくしている
空中では、丸めると速く回る
- 外力が働かない間は角運動量が保存される
- 体を丸めて慣性モーメントを小さくすると、回転が速くなる
- 外力がほとんど働かない局面では角運動量が保存される
- 角運動量は慣性モーメントと角速度の積にあたるため、身体を丸めて慣性モーメントを小さくすると角速度が増し、回転が速くなる
- 空中で回転そのものを新しく作り出しているのではなく、保存された角運動量の配分を変えている
④床からみる3節
床を押した力が、そのまま返ってくる
- 身体が押した力と大きさが等しく向きが反対の力が返る
- 地面反力は鉛直・前後・左右の3方向に分けて測れる
- 測れるのは床との間の力。筋が出した力そのものではない
- 地面反力=身体が地面を押す力に対して、大きさが等しく向きが反対の力が地面から身体に及ぼされるもの(作用・反作用の法則)
- 地面反力には鉛直方向のほかに前後方向・左右方向の成分が生じ、三方向の分力として計測できる
- フォースプレート(床反力計)が計測するのは床と身体の間に働いた力であり、個々の筋が発揮した力そのものではない
滑れば、出した力は伝わらない
- 足元に静止摩擦力が確保されて、はじめて床を押せる
- 靴底と床の組み合わせは力の伝わり方の問題
- 足元に十分な静止摩擦力が確保されることで足の滑りを防ぎ、脚で発揮した力を効率よくバーベルへ伝えられる
- 摩擦力が不足すると、発揮した力の一部が滑りに逃げて挙上に使われない
安定は、広さと高さで決まる
- 支持基底面が広いほど安定する
- 重心の位置が低いほど安定する
- 重心の鉛直線が支持基底面から外れると倒れる
- 支持基底面が広く、重心の位置が低いほど安定性は高くなる
- 重心から下ろした鉛直線が支持基底面の内側にあるあいだは倒れず、外へ出ると倒れる
- 足幅を広げる・重心を低くするという指示は、支持基底面の広さと重心の高さを変えている
⑤跳ぶ・曲がる2節
離れた瞬間に、高さは決まっている
- 踏切を離れたあと、働くのはほぼ重力だけ
- 高さを決めるのは踏切で得た鉛直方向の初速度
- 空中で変えられるのは姿勢。重心の軌道は変わらない
- 踏切を離れたあとは重力以外の力がほとんど働かず、跳躍の高さは踏切で得た鉛直方向の初速度によって決まる
- 空中での動作で重心の軌道は変えられない。変えられるのは重心に対する姿勢
- したがって跳躍の高さを改善する操作は、すべて踏切局面に入る
曲がるには、中心へ向かう力が要る
- 曲線を走るには円の中心へ向かう力が要る
- 身体を内側へ傾けて地面反力の向きを内へ向ける
- 一定の速さで曲線を走る場合も、向きが変わるため加速度が生じており、円の中心へ向かう力が必要になる
- その力は地面反力から得る。身体を内側へ傾けて地面反力の向きを内側へ向ける
- 曲率半径が小さいほど、速度が大きいほど、必要な力は大きくなる
この回の要点
- 速く挙げると大きくなる量はパワー。重さも仕事も変わらない
- 回転はトルク・慣性モーメント・角運動量の3語で読む
- 力学の言葉は向き・時間・回転・床の4語で引く
- 跳んだ高さは離地の瞬間に決まっている
読んだら、解いて確かめる
聞いて分かったつもりのところは、解くとはっきりします。間違えた問題だけが自動で復習に戻り、2回連続で正解すると外れます。
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JATI認定トレーニング指導者(JATI-ATI)一般科目の板書(公式テキストの章立て順)。
公式テキストの本文は使っていません。章題とページ数は目次から転記した事実、内容は公的機関の公開資料と教科書水準の一般知識にもとづいています。章ごとの出題数は公表されていません。