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バイオメカニクス13問・正解と解説つき

JATI認定トレーニング指導者(JATI-ATI)一般科目 ・ 公式テキスト第3章 ・ 分量 14%

力学の基礎理論と、スポーツおよびトレーニング動作のバイオメカニクス。力・トルク・仕事とパワー、動作の力学的な分析。

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  1. 同じ重さのダンベルを手に持って腕を体の前へ上げるとき、肘を伸ばしたまま上げるほうが肘を曲げて上げるより肩の筋にとってきつくなる理由はどれか。

    • 1肘を伸ばすと動作の速度が上がり、慣性が大きくなるため
    • 2肩関節の回転中心から重りまでの距離が長くなり、必要なトルクが大きくなるため正解
    • 3肘を伸ばすことでダンベルにかかる重力そのものが大きくなるため
    • 4肘を伸ばすと肩関節の可動域が狭まり、筋が働きにくくなるため

    Answer

    正解 2肩関節の回転中心から重りまでの距離が長くなり、必要なトルクが大きくなるため

    関節に必要なトルクは、加わる力の大きさと、関節の回転中心から力の作用線までの垂直距離(モーメントアーム)の積で決まる。肘を伸ばすと重りが肩から遠くなりモーメントアームが長くなるため、同じ重さでも肩の筋が発揮すべきトルクは大きくなる。「ダンベルにかかる重力そのものが大きくなる」は誤りで、重力は姿勢によって変わらない。「肩関節の可動域が狭まり」も誤りで、可動域は変わらない。「動作の速度が上がり、慣性が大きくなる」も誤りで、肘の角度は動作の速度を直接決めない。

    HINT 「重さ×距離」で効く。同じ重量でも体から遠いほど関節への負担が増える、が種目選択の基礎になる。

  2. 立位姿勢の安定性に関する説明として正しいものはどれか。

    • 1支持基底面が広く、重心の位置が低いほど安定性は高くなる正解
    • 2支持基底面が狭く、重心の位置が高いほど安定性は高くなる
    • 3安定性は重心の高さのみで決まり、支持基底面の広さは関係しない
    • 4重心が支持基底面の外に出ても、筋力があれば姿勢は安定して保たれる

    Answer

    正解 1支持基底面が広く、重心の位置が低いほど安定性は高くなる

    立位姿勢の安定性は、足の接地部分とその間を結んだ支持基底面が広いほど、また重心の位置が低いほど高くなる。加えて重心を床へ下ろした点が支持基底面の中にあることが、静的な安定の条件になる。「支持基底面が狭く、重心の位置が高いほど安定性は高くなる」は関係が逆である。「重心の高さのみで決まり、支持基底面の広さは関係しない」は一方の要素を落としている。「重心が支持基底面の外に出ても、筋力があれば姿勢は安定して保たれる」も誤りで、その状態では倒れる方向へ力が働き、足を踏み出すなどして支持基底面を移す必要がある。

    HINT スクワットでスタンスを広げると安定するのは支持基底面の話。高齢者の転倒予防でも同じ理屈を使う。

  3. 垂直跳びにおける地面反力の説明として正しいものはどれか。

    • 1身体が地面を押す力と大きさが等しく向きが反対の力で、身体はこの力を受けて上方へ加速される正解
    • 2地面が身体を押し返す力であり、身体が地面を押す力よりつねに小さい
    • 3身体の重さだけで決まる力であり、跳ぶ勢いによっては変化しない
    • 4空中にいる間も地面反力は働き続け、跳躍の高さを決める

    Answer

    正解 1身体が地面を押す力と大きさが等しく向きが反対の力で、身体はこの力を受けて上方へ加速される

    地面反力は作用・反作用の法則により、身体が地面を押す力と大きさが等しく向きが反対の力である。垂直跳びでは、この力のうち体重を上回る分が身体を上方へ加速させる。「身体が地面を押す力よりつねに小さい」は誤りで、作用と反作用は必ず同じ大きさである。「身体の重さだけで決まる力であり、跳ぶ勢いによっては変化しない」も誤りで、踏み切りでは体重の数倍に達する。「空中にいる間も地面反力は働き続け」も誤りで、地面から離れていれば地面反力は生じない。

    HINT 跳べる高さは「離地する瞬間の速度」で決まる。空中でできることはない、が動作指導の前提になる。

  4. 力積と運動量の関係に関する説明として正しいものはどれか。

    • 1運動量は力と時間の積であり、力積は質量と速度の積である
    • 2力積と運動量は同じ量を別の単位で表したもので、常に等しい値になる
    • 3力積は力と作用した時間の積であり、加えた力積の分だけ運動量が変化する正解
    • 4力積は力と移動した距離の積であり、加えた力積の分だけ運動量が変化する

    Answer

    正解 3力積は力と作用した時間の積であり、加えた力積の分だけ運動量が変化する

    力積は力と、その力が作用した時間の積で表され、物体に加えた力積の分だけ運動量(質量と速度の積)が変化する。同じ速度まで加速するのに、大きな力を短時間かけるか、小さな力を長時間かけるかという選択が生まれるのはこのためである。「力と移動した距離の積」は仕事の定義である。「運動量は力と時間の積であり、力積は質量と速度の積」は両者が入れ替わっている。「同じ量を別の単位で表したもので、常に等しい値になる」も誤りで、力積は運動量の変化量に等しく、運動量そのものとは別の量である。

    HINT 着地で膝を曲げて衝撃を和らげるのは、同じ運動量の変化を長い時間で受けて力を小さくする操作。

  5. 同じ重量を同じ高さまで挙上したとき、挙上に要した時間が短いほど大きくなる量はどれか。

    • 1力積
    • 2位置エネルギーの変化量
    • 3パワー(仕事率)正解
    • 4仕事

    Answer

    正解 3パワー(仕事率)

    仕事は力と、その力の向きに動いた距離の積で表されるため、同じ重量を同じ高さまで挙げれば所要時間にかかわらず仕事は等しい。これに対しパワー(仕事率)は単位時間あたりの仕事なので、短い時間で挙げるほど大きくなる。「仕事」は上記のとおり時間に影響されない。「力積」は力と時間の積で、速く挙げれば作用時間は短くなるため単純に大きくなるとは言えない。「位置エネルギーの変化量」も重量と高さで決まり、時間には依存しない。

    HINT 同じメニューでも「速く挙げる」とパワーのトレーニングになる。速度を指定する意味はここにある。

  6. 筋の収縮様式に関する説明として正しいものはどれか。

    • 1短縮性収縮は筋が引き伸ばされながら、伸張性収縮は筋が短くなりながら力を発揮する
    • 2等尺性収縮は筋の長さが変わりながら関節角度が一定に保たれる収縮である
    • 3伸張性収縮では筋は力を発揮しておらず、重力によって受動的に伸ばされている
    • 4短縮性収縮は筋が短くなりながら、伸張性収縮は筋が引き伸ばされながら力を発揮する正解

    Answer

    正解 4短縮性収縮は筋が短くなりながら、伸張性収縮は筋が引き伸ばされながら力を発揮する

    短縮性収縮(コンセントリック)は筋が短くなりながら力を発揮する収縮、伸張性収縮(エキセントリック)は外力によって筋が引き伸ばされながら力を発揮する収縮である。等尺性収縮は筋の長さが変わらない収縮を指す。「短縮性収縮は筋が引き伸ばされながら」は両者が入れ替わっている。「等尺性収縮は筋の長さが変わりながら」は定義と矛盾している。「伸張性収縮では筋は力を発揮しておらず、重力によって受動的に伸ばされている」は誤りで、伸張性収縮では大きな張力を発揮しており、遅発性筋痛が生じやすいのもこの局面である。

    HINT 「下ろす局面も筋は働いている」。ここを脱力させると刺激の半分を捨てることになる。

  7. 筋の力ー速度関係に関する説明として正しいものはどれか。

    • 1短縮性収縮では収縮の速度が速いほど発揮できる力は小さくなる正解
    • 2短縮性収縮では収縮の速度が速いほど発揮できる力は大きくなる
    • 3収縮の速度と発揮できる力の間に関係はなく、速度を変えても力は一定である
    • 4等尺性収縮で発揮できる力は、短縮性収縮の最大値より必ず小さい

    Answer

    正解 1短縮性収縮では収縮の速度が速いほど発揮できる力は小さくなる

    短縮性収縮では、収縮の速度が速くなるほど発揮できる力は小さくなるという関係がある。重い重量ほどゆっくりしか挙がらないのはこのためで、パワー(力と速度の積)が最大になるのは力と速度の中間あたりの条件になる。「速度が速いほど発揮できる力は大きくなる」は関係が逆である。「収縮の速度と発揮できる力の間に関係はなく」は、この基本的な関係を否定している。「等尺性収縮で発揮できる力は、短縮性収縮の最大値より必ず小さい」も誤りで、等尺性収縮のほうが短縮性収縮の最大より大きな力を発揮できる。

    HINT パワーを高めたいなら「最大重量」でも「最速の空振り」でもない中間の条件を選ぶ。

  8. 筋の力ー長さ関係に関する説明として正しいものはどれか。

    • 1筋の長さは張力に影響せず、どの関節角度でも同じ力を発揮できる
    • 2アクチンとミオシンの重なりが最も適した長さで最大の張力を発揮し、短すぎても長すぎても低下する正解
    • 3筋は短いほど大きな張力を発揮するため、最大限に短縮した位置で力が最大になる
    • 4筋は長いほど大きな張力を発揮するため、最大限に伸張した位置で力が最大になる

    Answer

    正解 2アクチンとミオシンの重なりが最も適した長さで最大の張力を発揮し、短すぎても長すぎても低下する

    筋が発揮できる張力は、アクチンフィラメントとミオシンフィラメントの重なり具合によって変わり、重なりが最も適した長さ(至適長)で最大となる。短すぎるとフィラメントが干渉し、長すぎると重なりが減るため、いずれも張力は低下する。「短いほど大きな張力を発揮する」「長いほど大きな張力を発揮する」はいずれも片側だけを見ており、至適長で最大になるという関係を表していない。「筋の長さは張力に影響せず、どの関節角度でも同じ力を発揮できる」も誤りで、関節角度によって発揮できる力が変わるのはこの関係によるところが大きい。

    HINT 種目によって「きつい角度」があるのはこの関係のため。可動域のどこで負荷が最大になるかを見る。

  9. 伸張ー短縮サイクル(ストレッチ・ショートニング・サイクル)の説明として正しいものはどれか。

    • 1短縮性収縮の直後に伸張性収縮を行うことで、筋が休息して回復する現象である
    • 2伸張性収縮を長く続けることで、筋の温度が上がり力が出やすくなる現象である
    • 3伸張と短縮の間に十分な時間を置くほど、発揮できる力は大きくなる
    • 4伸張性収縮の直後に短縮性収縮を行うことで、弾性エネルギーと反射の働きにより大きな力を発揮する正解

    Answer

    正解 4伸張性収縮の直後に短縮性収縮を行うことで、弾性エネルギーと反射の働きにより大きな力を発揮する

    伸張ー短縮サイクルは、伸張性収縮に続けてすばやく短縮性収縮を行うことで、腱などに蓄えられた弾性エネルギーの利用と伸張反射の働きにより、短縮性収縮単独より大きな力や速度を生む仕組みである。しゃがんだ反動を使った跳躍や、プライオメトリクスの原理にあたる。「短縮性収縮の直後に伸張性収縮を行う」は順序が逆である。「伸張性収縮を長く続けることで、筋の温度が上がり」は別の現象の説明である。「伸張と短縮の間に十分な時間を置くほど、発揮できる力は大きくなる」も誤りで、間を置くほど弾性エネルギーは熱として失われ、効果は小さくなる。

    HINT 「しゃがんでから止まらずに跳ぶ」が条件。止まった瞬間に弾性エネルギーは逃げる。

  10. 回転運動における慣性モーメントの説明として正しいものはどれか。

    • 1回転軸から質量が遠くに分布するほど大きくなり、回転させにくくなる正解
    • 2回転軸から質量が遠くに分布するほど小さくなり、回転させやすくなる
    • 3物体の質量だけで決まり、質量の分布には影響されない
    • 4回転の速度だけで決まり、質量の分布には影響されない

    Answer

    正解 1回転軸から質量が遠くに分布するほど大きくなり、回転させにくくなる

    慣性モーメントは回転のしにくさを表す量で、回転軸から質量が遠くに分布するほど大きくなる。回転動作で身体を小さくまとめると回転が速くなるのは、慣性モーメントが小さくなるためである。「遠くに分布するほど小さくなり」は関係が逆である。「物体の質量だけで決まり、質量の分布には影響されない」は、分布という中心的な要素を落としている。「回転の速度だけで決まり」も誤りで、慣性モーメントは速度とは別に、物体の形と質量の分布で決まる量である。

    HINT フィギュアスケートのスピンで腕を畳むと速くなるのがこれ。走動作の脚の畳み方にも同じ理屈が効く。

  11. フリーウエイトとマシンを用いたトレーニングの力学的な違いとして最も適切なものはどれか。

    • 1フリーウエイトは軌道が定まらないぶん安定させる筋も動員され、マシンは軌道が定まり目的の筋に絞りやすい正解
    • 2フリーウエイトは軌道が定まるため目的の筋に絞りやすく、マシンは安定させる筋も動員される
    • 3いずれも負荷のかかり方は同じで、扱える重量の上限だけが異なる
    • 4マシンは可動域を通じて負荷が一定にならないが、フリーウエイトは常に一定である

    Answer

    正解 1フリーウエイトは軌道が定まらないぶん安定させる筋も動員され、マシンは軌道が定まり目的の筋に絞りやすい

    フリーウエイトは軌道が定まらないため、目的の筋に加えて姿勢や軌道を安定させる筋も動員される。マシンは軌道が機械的に定まるため、目的の筋に負荷を絞りやすく、初心者や傷害からの復帰の場面でも扱いやすい。「フリーウエイトは軌道が定まるため目的の筋に絞りやすく」は両者が入れ替わっている。「いずれも負荷のかかり方は同じで、扱える重量の上限だけが異なる」は、動員される筋の違いを落としている。「マシンは可動域を通じて負荷が一定にならないが、フリーウエイトは常に一定」も誤りで、フリーウエイトでは重力に対する角度によってモーメントアームが変わるため、負荷は可動域を通じて変動する。

    HINT どちらが優れているかではなく、目的で選ぶ。「絞りたいならマシン、まとめて使いたいならフリー」。

  12. 挙上動作におけるスティッキングポイントの説明として最も適切なものはどれか。

    • 1挙上を終えて重量を保持している局面で、等尺性収縮が続く状態を指す
    • 2挙上の途中で速度が最も落ちる局面で、力学的に不利な関節角度と対応することが多い正解
    • 3挙上の中で最も速度が上がる局面で、力を発揮しやすい関節角度と対応する
    • 4挙上を開始する直前に静止している状態を指し、関節角度とは関係しない

    Answer

    正解 2挙上の途中で速度が最も落ちる局面で、力学的に不利な関節角度と対応することが多い

    スティッキングポイントは挙上動作の途中で速度が最も落ちる局面を指し、モーメントアームが長くなるなど力学的に不利な関節角度や、筋の至適長から外れる位置と対応することが多い。ここを通過できるかどうかが挙上の成否を分けるため、その角度に合わせた補助種目を組むことがある。「最も速度が上がる局面」は逆の説明である。「挙上を開始する直前に静止している状態」は、動作の途中に生じるという性質を捉えていない。「挙上を終えて重量を保持している局面」も、動作中の局面を指すという定義と異なる。

    HINT 「あと少しで挙がらない位置」は人によって違う。どの角度で止まるかを見ると補助種目が決まる。

  13. スクワットにおいて、しゃがむ深さを増すと一般に大きくなる負担はどれか。

    • 1上肢の筋に求められるトルク
    • 2バーベルにかかる重力そのものの大きさ
    • 3足関節を固定するために必要な靱帯の張力のみ
    • 4膝関節および股関節まわりの筋に求められるトルク正解

    Answer

    正解 4膝関節および股関節まわりの筋に求められるトルク

    しゃがむ深さを増すと、膝関節や股関節の回転中心から重心線までの距離(モーメントアーム)が長くなる局面が生じ、これらの関節まわりの筋に求められるトルクが大きくなる。深さを調整することが負荷の調整になるのはこのためである。「上肢の筋に求められるトルク」は、バーベルを担いだスクワットでは上肢が主たる負担を受ける部位ではない。「バーベルにかかる重力そのものの大きさ」は誤りで、重力は姿勢によって変わらない。「足関節を固定するために必要な靱帯の張力のみ」も誤りで、深さの影響は足関節だけに限られない。

    HINT 深さ・スタンス・バーの位置で、どの関節に効くかが変わる。重量を変えずに負荷を調整できる。

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