バイオメカニクス全34問・正解と解説つき
JATI認定トレーニング指導者(JATI-ATI)一般科目・ 公式テキスト第3章・ 分量 14%
力学の基礎理論と、スポーツおよびトレーニング動作のバイオメカニクス。力・トルク・仕事とパワー、動作の力学的な分析。
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- Q01#jg-bm-001
フロントスクワットがバックスクワットに比べて体幹をより直立に保ちやすい理由として、モーメントアームの観点から最も適切な説明はどれか。
- 1バーが重心の近くに位置するため、股関節まわりのモーメントアームが短くなるから正解
- 2フロントスクワットではバーが重くなり、扱える総重量が減って負担が下がるから
- 3フロントスクワットでは膝関節が動かないため、股関節のみで負荷を受け止めるから
- 4バーの位置にかかわらず、モーメントアームは常に一定で種類による違いはないから
Answer
正解 1:バーが重心の近くに位置するため、股関節まわりのモーメントアームが短くなるから
フロントスクワットではバーを鎖骨の前に担ぐため、バックスクワットに比べてバーの位置が体の重心に近づき、股関節まわりに生じるモーメントアーム(回転中心から力の作用線までの距離)が短くなる。そのぶん股関節を前傾させて釣り合いをとる必要が小さくなり、体幹を直立に保ちやすくなる。「フロントスクワットではバーが重くなり、扱える総重量が減って負担が下がるから」は誤りで、バーの重さ自体は保持位置とは無関係で、体幹が直立しやすい理由の説明にならない。「フロントスクワットでは膝関節が動かないため、股関節のみで負荷を受け止めるから」も誤りで、フロントスクワットでも膝関節は動き、膝関節まわりのトルクも生じる。「バーの位置にかかわらず、モーメントアームは常に一定で種類による違いはないから」も誤りで、バーの位置が変わればモーメントアームも変わる。
HINT モーメントアームは「回転中心から力の作用線までの距離」。担ぐ位置が変われば、股関節までのこの距離も変わる、という線で絞る。
- Q02#jg-bm-002
立位姿勢の安定性に関する説明として正しいものはどれか。
- 1支持基底面が広く、重心の位置が低いほど安定性は高くなる正解
- 2支持基底面が狭く、重心の位置が高いほど安定性は高くなる
- 3支持基底面は前後方向の安定にだけ関わり、左右方向の安定は重心の高さによる
- 4重心を床へ下ろした点が支持基底面の縁に近いほど、外乱に強くなる
Answer
正解 1:支持基底面が広く、重心の位置が低いほど安定性は高くなる
立位姿勢の安定性は、足の接地部分とその間を結んだ支持基底面が広いほど、また重心の位置が低いほど高くなる。加えて重心を床へ下ろした点が支持基底面の中にあることが、静的な安定の条件になる。「支持基底面が狭く、重心の位置が高いほど安定性は高くなる」は関係が逆である。「支持基底面は前後方向の安定にだけ関わり、左右方向の安定は重心の高さによる」は、支持基底面の働きを前後方向だけに切り詰めている。支持基底面はスタンス幅を広げれば左右方向にも広がり、両方向の安定に効く。「重心を床へ下ろした点が支持基底面の縁に近いほど、外乱に強くなる」も向きが逆で、縁に近いほど余裕が小さく、わずかな外乱で支持基底面の外へ出てしまう。
HINT スクワットでスタンスを広げると安定するのは支持基底面の話。高齢者の転倒予防でも同じ理屈を使う。
- Q03#jg-bm-003
スプリントの加速局面で、大きな水平方向の推進力を得るための動作として最も適切なものはどれか。
- 1接地位置を体より前にせず、やや後方寄りで地面を強く後方へ押し、体全体を前傾させて進む正解
- 2接地位置を体より前方に置き、ブレーキとなる力を利用しながら加速する
- 3上体を起こしたまま、垂直方向にのみ強く地面を押すことで前への加速を得る
- 4歩幅を最大限に広げることだけを意識し、接地の方向や体の傾きは二の次にする
Answer
正解 1:接地位置を体より前にせず、やや後方寄りで地面を強く後方へ押し、体全体を前傾させて進む
スプリントの加速局面では、接地位置を体より前に出さず、やや後方寄りの位置で地面を強く後方へ押すことで、作用・反作用により前方への地面反力(推進力)を大きく得られる。あわせて体全体を前傾させることで、この後方への押しを効率よく前への加速につなげられる。「接地位置を体より前方に置き、ブレーキとなる力を利用しながら加速する」は誤りで、接地が体より前に出るとブレーキ方向の力が生じ、加速を妨げる。「上体を起こしたまま、垂直方向にのみ強く地面を押すことで前への加速を得る」も誤りで、垂直方向の力だけでは水平方向の推進力は生まれない。「歩幅を最大限に広げることだけを意識し、接地の方向や体の傾きは二の次にする」も誤りで、歩幅だけを広げても接地位置や体の傾きが適切でなければ、ブレーキが増えてかえって加速を妨げる。
HINT 地面を押した向きの反対に力が返ってくる。前へ加速したいなら、どの向きに押すかで選ぶ。歩幅はその結果にすぎない。
- Q04#jg-bm-004
力積と運動量の関係に関する説明として正しいものはどれか。
- 1運動量は力と時間の積であり、力積は質量と速度の積である
- 2力積は運動量の変化率を表す量であり、単位時間あたりの運動量で求められる
- 3力積は力と移動した距離の積であり、加えた力積の分だけ運動量が変化する
- 4力積は力と作用した時間の積であり、加えた力積の分だけ運動量が変化する正解
Answer
正解 4:力積は力と作用した時間の積であり、加えた力積の分だけ運動量が変化する
力積は力と、その力が作用した時間の積で表され、物体に加えた力積の分だけ運動量(質量と速度の積)が変化する。同じ速度まで加速するのに、大きな力を短時間かけるか、小さな力を長時間かけるかという選択が生まれるのはこのためである。「力と移動した距離の積」は仕事の定義である。「運動量は力と時間の積であり、力積は質量と速度の積」は両者が入れ替わっている。「力積は運動量の変化率を表す量であり、単位時間あたりの運動量で求められる」も誤りで、運動量を時間で割った量は力にあたる。力積は運動量の変化量そのものに等しい。
HINT 着地で膝を曲げて衝撃を和らげるのは、同じ運動量の変化を長い時間で受けて力を小さくする操作。
- Q05#jg-bm-005
同じ重量を同じ高さまで挙上したとき、挙上に要した時間が短いほど大きくなる量はどれか。
- 1パワー(仕事率)正解
- 2力積(力×時間)
- 3位置エネルギーの変化量
- 4仕事
Answer
正解 1:パワー(仕事率)
仕事は力と、その力の向きに動いた距離の積で表されるため、同じ重量を同じ高さまで挙げれば所要時間にかかわらず仕事は等しい。これに対しパワー(仕事率)は単位時間あたりの仕事なので、短い時間で挙げるほど大きくなる。「仕事」は上記のとおり時間に影響されない。「力積」は力と時間の積で、速く挙げれば作用時間は短くなるため単純に大きくなるとは言えない。「位置エネルギーの変化量」も重量と高さで決まり、時間には依存しない。
HINT 同じメニューでも「速く挙げる」とパワーのトレーニングになる。速度を指定する意味はここにある。
- Q06#jg-bm-006
筋の収縮様式に関する説明として正しいものはどれか。
- 1短縮性収縮は筋が短くなりながら、伸張性収縮は引き伸ばされながら力を発揮する正解
- 2短縮性収縮は筋が引き伸ばされながら、伸張性収縮は筋が短くなりながら力を発揮する
- 3等尺性収縮は関節を動かさずに筋が短くなる収縮である
- 4伸張性収縮では筋は力を発揮しておらず、重力によって受動的に伸ばされている
Answer
正解 1:短縮性収縮は筋が短くなりながら、伸張性収縮は引き伸ばされながら力を発揮する
短縮性収縮(コンセントリック)は筋が短くなりながら力を発揮する収縮、伸張性収縮(エキセントリック)は外力によって筋が引き伸ばされながら力を発揮する収縮である。等尺性収縮は筋の長さが変わらない収縮を指す。「短縮性収縮は筋が引き伸ばされながら」は両者が入れ替わっている。「等尺性収縮は関節を動かさずに筋が短くなる収縮である」は、関節が動かない点は合っているが筋の長さの扱いが誤りで、等尺性収縮では筋の長さも変わらない。「伸張性収縮では筋は力を発揮しておらず、重力によって受動的に伸ばされている」は誤りで、伸張性収縮では大きな張力を発揮しており、遅発性筋痛が生じやすいのもこの局面である。
HINT 「下ろす局面も筋は働いている」。ここを脱力させると刺激の半分を捨てることになる。
- Q07#jg-bm-007
筋の力ー速度関係に関する説明として正しいものはどれか。
- 1短縮性収縮では収縮の速度が速いほど発揮できる力は大きくなる
- 2収縮の速度が影響するのは伸張性収縮だけで、短縮性収縮には当てはまらない
- 3等尺性収縮で発揮できる力は、短縮性収縮の最大値より必ず小さい
- 4短縮性収縮では速度が速いほど大きな力を出せなくなる正解
Answer
正解 4:短縮性収縮では速度が速いほど大きな力を出せなくなる
短縮性収縮では、収縮の速度が速くなるほど大きな力を出せなくなるという関係がある。重い重量ほどゆっくりしか挙がらないのはこのためで、パワー(力と速度の積)が最大になるのは力と速度の中間あたりの条件になる。「速度が速いほど発揮できる力は大きくなる」は関係が逆である。「収縮の速度が影響するのは伸張性収縮だけで、短縮性収縮には当てはまらない」は、力ー速度関係が成り立つ範囲を取り違えている。「等尺性収縮で発揮できる力は、短縮性収縮の最大値より必ず小さい」も誤りで、等尺性収縮のほうが短縮性収縮の最大より大きな力を発揮できる。
HINT パワーを高めたいなら「最大重量」でも「最速の空振り」でもない中間の条件を選ぶ。
- Q08#jg-bm-008
筋の力ー長さ関係に関する説明として正しいものはどれか。
- 1筋の長さと張力の関係は直線的で、長くなるほど張力はまっすぐ下がっていく
- 2アクチンとミオシンの重なりが最適な長さで最大張力を発揮する正解
- 3筋は短いほど大きな張力を発揮するため、最大限に短縮した位置で力が最大になる
- 4筋は長いほど大きな張力を発揮するため、最大限に伸張した位置で力が最大になる
Answer
正解 2:アクチンとミオシンの重なりが最適な長さで最大張力を発揮する
筋が発揮できる張力は、アクチンフィラメントとミオシンフィラメントの重なり具合によって変わり、重なりが最も適した長さ(至適長)で最大となる。短すぎるとフィラメントが干渉し、長すぎると重なりが減るため、いずれも張力は低下する。「短いほど大きな張力を発揮する」「長いほど大きな張力を発揮する」はいずれも片側だけを見ており、至適長で最大になるという関係を表していない。「筋の長さと張力の関係は直線的で、長くなるほど張力はまっすぐ下がっていく」も関係の形が誤りで、至適長を頂点として短い側にも長い側にも張力が落ちる山なりの関係になる。
HINT 種目によって「きつい角度」があるのはこの関係のため。可動域のどこで負荷が最大になるかを見る。
- Q09#jg-bm-009
伸張ー短縮サイクル(ストレッチ・ショートニング・サイクル)の説明として正しいものはどれか。
- 1短縮性収縮の直後に伸張性収縮を行うことで、筋が休息して回復する現象である
- 2伸張性収縮の直後に短縮性収縮を行うことで大きな力を発揮する正解
- 3伸張性収縮を長く続けることで、筋の温度が上がり力が出やすくなる現象である
- 4伸張と短縮の間に十分な時間を置くほど、発揮できる力は大きくなる
Answer
正解 2:伸張性収縮の直後に短縮性収縮を行うことで大きな力を発揮する
伸張ー短縮サイクルは、伸張性収縮に続けてすばやく短縮性収縮を行うことで、腱などに蓄えられた弾性エネルギーの利用と伸張反射の働きにより、短縮性収縮単独より大きな力や速度を生む仕組みである。しゃがんだ反動を使った跳躍や、プライオメトリクスの原理にあたる。「短縮性収縮の直後に伸張性収縮を行う」は順序が逆である。「伸張性収縮を長く続けることで、筋の温度が上がり」は別の現象の説明である。「伸張と短縮の間に十分な時間を置くほど、発揮できる力は大きくなる」も誤りで、間を置くほど弾性エネルギーは熱として失われ、効果は小さくなる。
HINT 「しゃがんでから止まらずに跳ぶ」が条件。止まった瞬間に弾性エネルギーは逃げる。
- Q10#jg-bm-010
回転運動における慣性モーメントの説明として正しいものはどれか。
- 1回転軸から質量が遠くに分布するほど大きくなり、回転させにくい正解
- 2回転軸から質量が遠くに分布するほど小さくなり、回転させやすくなる
- 3物体の質量と回転軸までの距離を足し合わせた値として表される
- 4回転の速度が上がるほど大きくなり、静止している間はゼロになる
Answer
正解 1:回転軸から質量が遠くに分布するほど大きくなり、回転させにくい
慣性モーメントは回転のしにくさを表す量で、回転軸から質量が遠くに分布するほど大きくなる。回転動作で身体を小さくまとめると回転が速くなるのは、慣性モーメントが小さくなるためである。「遠くに分布するほど小さくなり」は関係が逆である。「物体の質量と回転軸までの距離を足し合わせた値として表される」は組み立て方が誤りで、質量に軸からの距離の2乗を掛け合わせたものの総和にあたる。「回転の速度が上がるほど大きくなり、静止している間はゼロになる」も誤りで、速度によって変わる量ではなく、静止していても物体の形と質量の分布だけで定まる。
HINT フィギュアスケートのスピンで腕を畳むと速くなるのがこれ。走動作の脚の畳み方にも同じ理屈が効く。
- Q11#jg-bm-011
フリーウエイトとマシンを用いたトレーニングの力学的な違いとして最も適切なものはどれか。
- 1フリーウエイトは軌道が定まるため目的の筋に絞りやすく、マシンは安定させる筋も動員される
- 2マシンは座位で行うため体幹の筋が働かず、立位のフリーウエイトでは働く
- 3フリーウエイトは目的筋だけに絞れず、マシンは絞れる正解
- 4マシンは可動域を通じて負荷の大きさが変動するが、フリーウエイトは常に一定である
Answer
正解 3:フリーウエイトは目的筋だけに絞れず、マシンは絞れる
フリーウエイトは軌道が定まらないため、目的の筋だけに負荷を絞れず、姿勢や軌道を安定させる筋も動員される。マシンは軌道が機械的に定まるため、目的の筋に負荷を絞りやすく、初心者や傷害からの復帰の場面でも扱いやすい。「フリーウエイトは軌道が定まるため目的の筋に絞りやすく」は両者が入れ替わっている。「マシンは座位で行うため体幹の筋が働かず、立位のフリーウエイトでは働く」は、違いを生んでいるものを姿勢に取り違えている。動員される筋の差を生むのは軌道が機械に定められているかどうかであって、立位のマシンにも座位のフリーウエイト種目にも同じことがいえる。「マシンは可動域を通じて負荷の大きさが変動するが、フリーウエイトは常に一定である」も誤りで、フリーウエイトでは重力に対する角度によってモーメントアームが変わるため、負荷は可動域を通じて変動する。
HINT どちらが優れているかではなく、目的で選ぶ。「絞りたいならマシン、まとめて使いたいならフリー」。
- Q12#jg-bm-012
挙上動作におけるスティッキングポイントの説明として最も適切なものはどれか。
- 1挙上を終えて重量を保持している局面で、等尺性収縮が続く状態を指す
- 2挙上の途中で速度が最も落ちる局面を指す正解
- 3挙上の中で最も速度が上がる局面で、力を発揮しやすい関節角度と対応する
- 4挙上を開始する直前に静止している状態を指す
Answer
正解 2:挙上の途中で速度が最も落ちる局面を指す
スティッキングポイントは挙上動作の途中で速度が最も落ちる局面を指し、モーメントアームが長くなるなど力学的に不利な関節角度や、筋の至適長から外れる位置と対応することが多い。ここを通過できるかどうかが挙上の成否を分けるため、その角度に合わせた補助種目を組むことがある。「最も速度が上がる局面」は逆の説明である。「挙上を開始する直前に静止している状態」は、動作の途中に生じるという性質を捉えていない。「挙上を終えて重量を保持している局面」も、動作中の局面を指すという定義と異なる。
HINT 「あと少しで挙がらない位置」は人によって違う。どの角度で止まるかを見ると補助種目が決まる。
- Q13#jg-bm-013
スクワットにおいて、しゃがむ深さを増すと一般に大きくなる負担はどれか。
- 1膝と股関節まわりの筋のトルク正解
- 2上肢の筋に求められるトルク
- 3バーベルにかかる重力そのものの大きさ
- 4足関節を固定するために必要な靱帯の張力のみ
Answer
正解 1:膝と股関節まわりの筋のトルク
しゃがむ深さを増すと、膝関節や股関節の回転中心から重心線までの距離(モーメントアーム)が長くなる局面が生じ、これらの関節まわりの筋に求められるトルクが大きくなる。深さを調整することが負荷の調整になるのはこのためである。「上肢の筋に求められるトルク」は、バーベルを担いだスクワットでは上肢が主たる負担を受ける部位ではない。「バーベルにかかる重力そのものの大きさ」は誤りで、重力は姿勢によって変わらない。「足関節を固定するために必要な靱帯の張力のみ」も誤りで、深さの影響は足関節だけに限られない。
HINT 深さ・スタンス・バーの位置で、どの関節に効くかが変わる。重量を変えずに負荷を調整できる。
- Q14#jg-bm-014
体幹をひねる動作のように、大きさが等しく向きが反対の2つの力が、身体の中心から離れた平行な2つの作用線に働く状態(偶力)に関する説明として正しいものはどれか。
- 1合力はゼロになるが、正味のモーメントは打ち消し合わずに生じ、物体はその場で回転する正解
- 2合力もモーメントもともにゼロになるため、物体はそのまま静止する
- 3合力はゼロにならず、物体は回転せずに一方向へ並進するだけになる
- 42つの力の大きさが等しいときに限り、モーメントも互いに打ち消し合って回転は起こらない
Answer
正解 1:合力はゼロになるが、正味のモーメントは打ち消し合わずに生じ、物体はその場で回転する
偶力とは、大きさが等しく向きが反対の2つの平行な力が、異なる作用線上に働く状態を指す。力そのものの合計(合力)はゼロになるため物体全体を動かす並進の効果は生じないが、2つの作用線がずれているために生じるモーメント(トルク)は互いに打ち消し合わず、正味の回転の働きとして残る。体幹をひねる動作で、片側の外腹斜筋ともう片側の内腹斜筋が逆方向に働きながら体幹を回旋させるのはこの仕組みにあたる。「合力もモーメントもともにゼロになるため、物体はそのまま静止する」は誤りで、モーメントはゼロにならない。「合力はゼロにならず、物体は回転せずに一方向へ並進するだけになる」も誤りで、偶力では合力はゼロになり、並進ではなく回転が生じる。「2つの力の大きさが等しいときに限り、モーメントも互いに打ち消し合って回転は起こらない」も誤りで、大きさが等しいからこそモーメントは打ち消し合わずに正味の回転として働く。
HINT 力の合計と、力が生む回転の働きは別物。合計がゼロでも回転は起こりうる。
- Q15#jg-bm-015
水中や空中での宙返り動作において、外力がほとんど働かない局面で、身体を丸めて回転速度を速める操作の力学的な説明として正しいものはどれか。
- 1体を丸めることで新たに回転させる力が生じ、その力の分だけ角運動量そのものが増加する
- 2外力が働かない間は角運動量が保存されるため、体を丸めて慣性モーメントを小さくすると回転速度が増す正解
- 3角運動量は一定の値をとる物理量ではなく、姿勢を変えるたびに外力なしで自由に変化してしまう
- 4外力が働かない間も角運動量は保存されないため、体を丸めても回転速度は変わらない
Answer
正解 2:外力が働かない間は角運動量が保存されるため、体を丸めて慣性モーメントを小さくすると回転速度が増す
外力(正確には外部から加わる回転させる力=トルク)がほとんど働かない空中局面では、角運動量(慣性モーメント×角速度)は保存される。この条件のもとで身体を丸めて質量を回転軸に近づけると慣性モーメントが小さくなり、角運動量を一定に保つために角速度、すなわち回転速度が増す。体を伸ばせば逆に回転は遅くなる。「体を丸めることで新たに回転させる力が生じ、その力の分だけ角運動量そのものが増加する」は誤りで、空中では新たな外力は生じておらず、角運動量の総量は変わらない。「角運動量は一定の値をとる物理量ではなく、姿勢を変えるたびに外力なしで自由に変化してしまう」も誤りで、外力がなければ角運動量は保存され、勝手には変化しない。「外力が働かない間も角運動量は保存されないため、体を丸めても回転速度は変わらない」も誤りで、外力が働かない間はまさに角運動量が保存され、慣性モーメントの変化に応じて回転速度が変わる。
HINT 回転軸に質量を寄せるか離すかだけで、外から何もしなくても回転の速さが変わる。
- Q16#jg-bm-016
フリーウエイトによる負荷と、ゴムチューブやチェーンを用いた可変抵抗による負荷の力学的な違いとして最も適切なものはどれか。
- 1フリーウエイトの負荷は可動域を通じて変化せず、ゴムチューブの抵抗も伸びの量によって増減することはない
- 2ゴムチューブの抵抗は伸ばすほど小さくなり、関節が不利になる可動域の終盤でかえって負荷が抜けてしまう
- 3フリーウエイトもゴムチューブも、抵抗の大きさは伸ばす速さに比例して増すので、ゆっくり動かすほど軽くなる
- 4フリーウエイトの負荷はほぼ一定だが、ゴムチューブは伸びるほど抵抗が増し、終盤で負荷が高まりやすい正解
Answer
正解 4:フリーウエイトの負荷はほぼ一定だが、ゴムチューブは伸びるほど抵抗が増し、終盤で負荷が高まりやすい
フリーウエイトが及ぼす負荷(重力)そのものの大きさは可動域を通じてほぼ一定だが、それによって関節に生じるモーメントは姿勢によって変わる。一方、ゴムチューブやチェーンは伸びる(引き伸ばされる)ほど抵抗が大きくなる性質をもつため、関節が力を発揮しやすい可動域の終盤で負荷が高まりやすく、筋の力ー長さ関係や関節角度による有利・不利に抵抗を近づけやすい。「フリーウエイトの負荷は可動域を通じて変化せず、ゴムチューブの抵抗も伸びの量によって増減することはない」は誤りで、ゴムチューブの抵抗は伸びに応じて変化する。「ゴムチューブの抵抗は伸ばすほど小さくなり、関節が不利になる可動域の終盤でかえって負荷が抜けてしまう」は関係が逆である。「フリーウエイトもゴムチューブも、抵抗の大きさは伸ばす速さに比例して増すので、ゆっくり動かすほど軽くなる」も誤りで、ゴムチューブの抵抗を左右するのは動かす速さではなく主に伸びの量(長さ)である。
HINT ゴムは伸ばすほど張力が増える。可動域のどこで負荷を強めたいかで選ぶ道具が変わる。
- Q17#jg-bm-017
フォースプレート(床反力計)で計測される地面反力に関する説明として正しいものはどれか。
- 1地面反力は接地の瞬間に最大となり、そこから離地まで一方向に減る
- 2地面反力は鉛直方向に加え、前後や左右方向の成分も生じ、三方向の分力として計測できる正解
- 3地面反力は体重計が示す値にあたり、走行中も歩行中もその大きさは体重に等しい
- 4地面反力は鉛直方向の成分のみで構成され、前後方向や左右方向の力は原理的に生じない
Answer
正解 2:地面反力は鉛直方向に加え、前後や左右方向の成分も生じ、三方向の分力として計測できる
フォースプレートは、身体が地面を押す力の反作用として生じる地面反力を、鉛直方向・前後方向・左右方向の三方向の分力として同時に計測できる。左右の脚で分力の大きさやタイミングが異なれば、動作の左右差やジャンプ・切り返しの技術的な特徴を把握する手がかりになる。「地面反力は接地の瞬間に最大となり、そこから離地まで一方向に減る」は推移の形が誤りで、走行の接地では衝撃のピークのあとにもう一度山ができるなど、増減を繰り返しながら推移する。「地面反力は体重計が示す値にあたり、走行中も歩行中もその大きさは体重に等しい」も誤りで、静止して立っているときは体重に等しいが、動作が速く急激であるほど体重を大きく上回る。「地面反力は鉛直方向の成分のみで構成され、前後方向や左右方向の力は原理的に生じない」も誤りで、方向転換や加速の局面では前後・左右方向の分力が大きく現れる。
HINT 床反力計は上下だけでなく、前後や左右の力も同時に測っている。方向転換の評価に使われる理由。
- Q18#jg-bm-018
野球の投球やゴルフのスイングのように、下肢から体幹、上肢へと動作を伝えていく運動連鎖の力学的な意義として最も適切なものはどれか。
- 1遠位の部位を先に大きく動かしてしまい、近位の部位をあとから動かすほど、末端の速度はかえって大きくなる
- 2各関節を同時に、同じ速度で動かすことが、末端の速度を最大にする唯一の方法である
- 3運動連鎖は上肢だけで完結する現象であり、下肢や体幹が動くのは反動を抑えるためである
- 4近位の大きな筋群から動き始め、遠位の部位へ動きを伝えるほど、末端の速度を大きく高められる正解
Answer
正解 4:近位の大きな筋群から動き始め、遠位の部位へ動きを伝えるほど、末端の速度を大きく高められる
運動連鎖(キネティックチェーン)は、比較的大きな力を発揮できる近位の部位(下肢・体幹)から動き始め、それぞれの部位が生み出した速度を次の部位へ引き継ぎながら遠位(末端)へと伝えていくことで、末端の速度を段階的に高めていく仕組みである。投球やスイングで下肢と体幹の動きが乏しいと、上肢だけでは出せる速度に限りがある。「遠位の部位を先に大きく動かしてしまい、近位の部位をあとから動かすほど、末端の速度はかえって大きくなる」は順序が逆で、末端が先に動いてしまうと後に続く部位から力を受け取れない。「各関節を同時に、同じ速度で動かすことが、末端の速度を最大にする唯一の方法である」も誤りで、運動連鎖はタイミングをずらして順に加速を引き継ぐことに意味がある。「運動連鎖は上肢だけで完結する現象であり、下肢や体幹が動くのは反動を抑えるためである」も誤りで、下肢と体幹こそが運動連鎖の起点として速度を生み出す側にある。
HINT 投げる・振る動作は足元から始まる。末端が速いのは、途中の部位から速度を受け継いでいるから。
- Q19#jg-bm-019
最大筋力とRFD(力の立ち上がり速度)の違いに関する説明として最も適切なものはどれか。
- 1RFDは力が最大に達するまでにかかった時間そのものを表す指標である
- 2RFDは等尺性の条件でしか測れないため、ジャンプやスプリントの評価には用いられない
- 3RFDは最大筋力が高まれば必ず同じ割合で高まる指標であるため、最大筋力さえ測ればRFDも分かる
- 4最大筋力は力の大きさの上限を表し、RFDは短い時間内に力をどれだけ速く高められるかを表す正解
Answer
正解 4:最大筋力は力の大きさの上限を表し、RFDは短い時間内に力をどれだけ速く高められるかを表す
最大筋力は、時間の制約なくどこまで大きな力を発揮できるかという上限を表す指標である。これに対しRFDは、動作開始から一定の短い時間内にどれだけ速く力を立ち上げられるかを表す指標で、ジャンプやスプリントの初期加速のように接地時間や動作時間が短い場面ほど重要になる。1RMが高くても、力の立ち上がりが遅ければ短時間の動作では本来の筋力を発揮しきれないことがあるため、両者は別の質の能力として扱われる。「RFDは力が最大に達するまでにかかった時間そのものを表す指標である」は、時間を測るところまでは近いが、RFDは力の増加量を時間で割った立ち上がりの傾きであって、到達までの時間そのものではない。「RFDは等尺性の条件でしか測れないため、ジャンプやスプリントの評価には用いられない」も誤りで、短い接地時間のなかでどれだけ力を立ち上げられるかこそ、これらの動作で重視される点である。「RFDは最大筋力が高まれば必ず同じ割合で高まる指標であるため、最大筋力さえ測ればRFDも分かる」も誤りで、最大筋力の向上とRFDの向上は必ずしも一致しない。
HINT どれだけ強いかと、どれだけ速く強くなれるかは別の能力。接地時間が短い競技ほど後者が効いてくる。
- Q20#jg-bm-020
高重量のスクワットやデッドリフトにおいて、床とシューズの間の摩擦力が果たす役割に関する説明として最も適切なものはどれか。
- 1摩擦力は動作の速度が速いほど働きにくくなるため、素早く挙げる種目ほど滑りやすい床が適している
- 2摩擦力が働くのはバーベルと手のひらの間だけで、足元の床面では滑りは起こらない
- 3十分な静止摩擦力が足元に確保されることで足の滑りを防ぎ、下肢で発揮した力を効率よくバーベルへ伝えられる正解
- 4摩擦力はバーベルの重さそのものを軽くする働きをもち、摩擦が大きいほど扱える重量の上限が上がる
Answer
正解 3:十分な静止摩擦力が足元に確保されることで足の滑りを防ぎ、下肢で発揮した力を効率よくバーベルへ伝えられる
スクワットやデッドリフトのように大きな力を地面へ向けて発揮する種目では、足底と床の間に十分な静止摩擦力が確保されていなければ、力を伝えている最中に足が滑ってしまい、発揮した力の一部が動作の推進や姿勢の維持に使われずに失われる。適切な靴底と床面の組み合わせは、この摩擦力を確保して力の伝達を助ける役割をもつ。「摩擦力は動作の速度が速いほど働きにくくなるため、素早く挙げる種目ほど滑りやすい床が適している」は誤りで、滑りやすい床はどの速度の種目でも足の滑りを招き、力の伝達を妨げる。「摩擦力が働くのはバーベルと手のひらの間だけで、足元の床面では滑りは起こらない」も誤りで、摩擦力はまさに下肢と床の間の力の伝達を左右する。「摩擦力はバーベルの重さそのものを軽くする働きをもち、摩擦が大きいほど扱える重量の上限が上がる」も誤りで、摩擦力はバーベルの重量そのものを変えるものではない。
HINT 足が滑れば、下肢で発揮した力の一部はバーベルへ届く前に逃げてしまう。
- Q21#jg-bm-021
垂直跳びの踏切局面で、地面を強く下方へ押すことによって高く跳び上がれる理由を、ニュートンの法則にもとづいて説明したものとして正しいものはどれか。
- 1地面を押す力が身体の重さを一時的に軽くするため、その分だけ跳躍が高くなる
- 2身体が地面を押す力と大きさが等しく向きが反対の力を、地面が身体に及ぼし返すためである正解
- 3地面を押す力と、地面が身体を押し返す力は、動作が速いときに限り大きさが等しくなる
- 4地面を押す力が大きいほど、地面が身体を押し返す力はかえって小さくなる
Answer
正解 2:身体が地面を押す力と大きさが等しく向きが反対の力を、地面が身体に及ぼし返すためである
作用・反作用の法則により、身体が地面を強く下方へ押す力(作用)に対して、地面は同じ大きさで反対向きの力(反作用)を身体に及ぼし返す。この地面からの力(地面反力)によって身体は上向きに加速され、跳躍の高さにつながる。「地面を押す力が身体の重さを一時的に軽くするため、その分だけ跳躍が高くなる」は誤りで、重さ(重力)そのものは動作によって変わらない。「地面を押す力と、地面が身体を押し返す力は、動作が速いときに限り大きさが等しくなる」も誤りで、作用・反作用の関係は動作の速さにかかわらず常に成り立つ。「地面を押す力が大きいほど、地面が身体を押し返す力はかえって小さくなる」も誤りで、両者は常に同じ大きさで向きが反対になる。
HINT 押した分だけ、押し返される。跳躍の高さはこの押し返しの大きさで決まる。
- Q22#jg-bm-022
垂直跳びで空中に飛び出した後、踏切を離れてからの身体の動きに関する説明として正しいものはどれか。
- 1空中では重力以外の力はほとんど働かず、跳躍の高さは踏切で得た鉛直方向の初速度によって決まる正解
- 2空中でも脚を大きく動かせば、踏切を離れた後であっても跳躍の高さをさらに高めることができる
- 3跳躍の高さは踏切で得た水平方向の初速度によって決まるので、助走が速いほど高く跳べる
- 4空中に飛び出した後は重力が働かなくなるため、落下が始まるのは下降の局面に入ってからになる
Answer
正解 1:空中では重力以外の力はほとんど働かず、跳躍の高さは踏切で得た鉛直方向の初速度によって決まる
空中に飛び出した後は、空気抵抗を無視すれば重力以外の力はほとんど働かない放物運動になる。この条件のもとでは、跳躍の高さは踏切の瞬間に得た鉛直方向の初速度の大きさだけで決まり、空中でどれだけ脚を動かしても新たに高さを稼ぐことはできない。「空中でも脚を大きく動かせば、踏切を離れた後であっても跳躍の高さをさらに高めることができる」は誤りで、離地後は外力がないため軌道は初速度で決まってしまう。「跳躍の高さは踏切で得た水平方向の初速度によって決まるので、助走が速いほど高く跳べる」も誤りで、高さを決めるのは水平方向ではなく鉛直方向の初速度である。「空中に飛び出した後は重力が働かなくなるため、落下が始まるのは下降の局面に入ってからになる」も誤りで、重力は離地の瞬間から着地まで休みなく働いており、上昇している最中も身体は下向きに加速されている。
HINT 跳んだ後にできることは何もない。高さを決めるのは踏切の瞬間の鉛直方向の勢いだけ。
- Q23#jg-bm-023
角度をつけて座るレッグプレスマシンで足元のプレートを押すとき、負荷が及ぼす力は、スレッドに沿った方向の成分と、スレッドに垂直な方向の成分に分解できる。スレッドの傾斜角を床からの角度とするとき、この分解に関する説明として正しいものはどれか。
- 1スレッドの傾斜にかかわらず、沿った方向の成分は常に負荷の全体量と等しい大きさに保たれる
- 2力の分解は水平面に置かれた種目にのみ当てはまり、傾斜のある器具の負荷には当てはまらない
- 3垂直な方向の成分は押す動作にそのまま利用され、傾斜の角度によって大きさは変化しない
- 4スレッドの傾斜が急なほど、押す動作に使われる沿った方向の成分の割合は大きくなる正解
Answer
正解 4:スレッドの傾斜が急なほど、押す動作に使われる沿った方向の成分の割合は大きくなる
傾斜したスレッドの上を動くレッグプレスでは、負荷(重力)はスレッドに沿った方向の成分と、スレッドに垂直な方向の成分に分解できる。押す動作に抵抗として働くのはスレッドに沿った方向の成分で、床からの傾斜角が急になるほど、この沿った方向の成分の割合は大きくなり、垂直な方向の成分(スレッドを押しつける働き)の割合は小さくなる。極端な例で考えると分かりやすい。スレッドが床と平行(傾斜0度)なら、負荷は真下へ向くだけで沿った方向の成分はほとんど残らない。逆にスレッドが垂直に立っていれば、負荷の全体量がそのまま沿った方向の成分になる。「スレッドの傾斜にかかわらず、沿った方向の成分は常に負荷の全体量と等しい大きさに保たれる」は誤りで、沿った方向の成分は傾斜角によって変わり、全体量と等しくなるのはスレッドが垂直のときだけである。「力の分解は水平面に置かれた種目にのみ当てはまり、傾斜のある器具の負荷には当てはまらない」も誤りで、力の分解は角度のついた器具でこそ意味をもつ考え方である。「垂直な方向の成分は押す動作にそのまま利用され、傾斜の角度によって大きさは変化しない」も誤りで、垂直な方向の成分は押す動作には使われず、角度によって大きさが変わる。
HINT 床と平行なスレッドと、垂直に立ったスレッドを思い浮かべる。どちらが負荷の全体量をそのまま押すことになるか。
- Q24#jg-bm-024
投球動作で体幹の安定性が不足している場合に、下肢で発生させた力がボールの速度へ十分に伝わらなくなる現象を説明するものとして最も適切なものはどれか。
- 1運動連鎖の途中にある体幹が力を支えきれず、そこで力が逃げてしまい、末端まで力が伝わりにくくなる正解
- 2体幹の安定性が足りない場合でも、上肢の筋力を高めればボールの速度は十分に補える
- 3体幹が不安定なほど、その分だけ下肢で発揮する力そのものが自動的に大きくなる
- 4下肢で発揮した力は骨を伝って直接ボールへ届くので、途中にある部位が力を受け渡す場面はそもそも生じない
Answer
正解 1:運動連鎖の途中にある体幹が力を支えきれず、そこで力が逃げてしまい、末端まで力が伝わりにくくなる
運動連鎖では、近位の部位から遠位の部位へ順に力・速度を引き継いでいく過程で、途中の部位(この場合は体幹)が力を支えきれず不安定になると、そこで力が姿勢の乱れや余計な動きに使われて逃げてしまい、末端まで十分に力が伝わらなくなる。これはしばしば弱いリンクでのエネルギーの漏れと呼ばれる。「体幹の安定性が足りない場合でも、上肢の筋力を高めればボールの速度は十分に補える」は誤りで、体幹は運動連鎖の中継点であり、そこで逃げた力を上肢の筋力で埋め合わせることはできない。「体幹が不安定なほど、その分だけ下肢で発揮する力そのものが自動的に大きくなる」も誤りで、体幹の不安定さは力の伝達を妨げる方向に働く。「下肢で発揮した力は骨を伝って直接ボールへ届くので、途中にある部位が力を受け渡す場面はそもそも生じない」も誤りで、運動連鎖は各部位を順に経由して伝わる過程であり、途中の状態が結果を左右する。
HINT 鎖はいちばん弱い部分の強さでしか力を伝えられない。体幹はその鎖の中継点。
- Q25#jg-bm-025
バーベルを静止状態から素早く引き上げようとするとき、動き始めの加速局面でバーベルを支えるために必要な力に関する説明として正しいものはどれか。
- 1バーベルを素早く動かすほど、必要な力はバーベルの重さより小さくなる
- 2必要な力が重さを上回るのは、バーベルが最高速度に達した瞬間だけである
- 3重さに加えて加速させるための力も必要になるため、静止時に支える力より大きな力が要る正解
- 4バーベルを加速させても、必要な力はバーベルの重さと常に等しく、それ以上にはならない
Answer
正解 3:重さに加えて加速させるための力も必要になるため、静止時に支える力より大きな力が要る
ニュートンの第二法則(力=質量×加速度)にしたがえば、静止しているバーベルを支えるには重さ(重力)に等しい力があればよいが、そこから加速させて動かし始めるには、重さに加えてバーベルを加速させるための力が追加で必要になる。したがって動き始めの加速局面では、静止時に支える力より大きな力が働く。「バーベルを素早く動かすほど、必要な力はバーベルの重さより小さくなる」は関係が逆で、速く加速させるほどより大きな力が必要になる。「必要な力が重さを上回るのは、バーベルが最高速度に達した瞬間だけである」も局面の取り違えで、力が余分に要るのは速度を高めている加速の局面であり、速度が頭打ちになった瞬間ではない。「バーベルを加速させても、必要な力はバーベルの重さと常に等しく、それ以上にはならない」も誤りで、加速させるにはそれ以上の力が要る。
HINT 支えるのと加速させるのは別の力の要求。動き始めほど余分に力が要る。
- Q26#jg-bm-026
パワークリーンのセカンドプルで重視される、いわゆるトリプルエクステンションの説明として最も適切なものはどれか。
- 1股関節・膝関節・足関節をひとつずつ順番に、大きく時間差をとって伸展させる動作を指す
- 2肩関節・肘関節・手関節の3つの関節が同時に屈曲し、バーベルを身体へ引き寄せる動作を指す
- 3股関節と膝関節と足関節がほぼ同時に伸展し、短時間で大きな力を伝える動作を指す正解
- 43つの関節のうち、いずれか1つだけが最大まで伸展すればよく、残り2つは動かなくてよい
Answer
正解 3:股関節と膝関節と足関節がほぼ同時に伸展し、短時間で大きな力を伝える動作を指す
トリプルエクステンションは、パワークリーンやジャンプ動作のセカンドプルにあたる局面で、股関節・膝関節・足関節の3つの関節がほぼ同時に伸展することを指す。複数の大きな関節を同時に伸展させることで、短い時間に大きな力をバーベルや身体へ伝えることができる。「股関節・膝関節・足関節をひとつずつ順番に、大きく時間差をとって伸展させる動作を指す」は誤りで、大きな時間差をつけてしまうと同時に力を合成できず、出力が小さくなる。「肩関節・肘関節・手関節の3つの関節が同時に屈曲し、バーベルを身体へ引き寄せる動作を指す」は上肢の別の局面(プル後半の引き付け)の説明であり、トリプルエクステンションが指す下肢・体幹側の伸展動作ではない。「3つの関節のうち、いずれか1つだけが最大まで伸展すればよく、残り2つは動かなくてよい」も誤りで、3関節の同時伸展が揃って初めて大きな出力が得られる。
HINT 股関節・膝関節・足関節をそろえて伸ばす。ジャンプの踏み切りでも同じ動きが起こっている。
- Q27#jg-bm-027
動作の分析で用いる「距離と変位」および「速さと速度」の関係として、最も適切なものはどれか。
- 1距離と速さは向きを含む量であり、変位と速度は大きさを表す量である
- 2出発点に戻る動作では、進んだ距離と変位の大きさが一致する
- 3変位と速度は向きを含んでいる量であり、距離と速さは大きさを表す量である正解
- 4速度は向きを含む量だが、変位は進んだ道のりの長さを表している
Answer
正解 3:変位と速度は向きを含んでいる量であり、距離と速さは大きさを表す量である
変位は出発点から到達点へ向かう向きと大きさをもつ量で、速度はその変位を時間で割った量なので、どちらも向きを含む。これに対して距離は実際に進んだ道のりの長さ、速さはそれを時間で割った量で、いずれも大きさだけを表す。「距離と速さは向きを含む量であり、変位と速度は大きさを表す量である」は両者の性質が入れ替わっている。「出発点に戻る動作では、進んだ距離と変位の大きさが一致する」は誤りで、往復して出発点に戻れば変位の大きさはゼロになるが、進んだ距離は往復した分だけ残る。「速度は向きを含む量だが、変位は進んだ道のりの長さを表している」も誤りで、道のりの長さを表すのは距離のほうである。
HINT 一周して戻ってきたとき、ゼロになるのはどちらか。
- Q28#jg-bm-028
一定の速さで曲線のコースを走るときに身体へ求められる力学的な条件として、最も適切なものはどれか。
- 1円の中心へ向かう力が要るため、身体を内側へ傾けて地面反力の向きを内側へ向ける正解
- 2進む向きの変化は加速度ではないため、直線を走るときと力の要求に違いは生じない
- 3曲線の半径が小さいほど必要な力は小さくなるため、内側のレーンほど楽に走れる
- 4身体を外側へ傾けて重心を支持基底面の外へ置くほど、曲線に沿った動きが保たれていく
Answer
正解 1:円の中心へ向かう力が要るため、身体を内側へ傾けて地面反力の向きを内側へ向ける
速さが一定であっても進む向きが変わっていれば速度は変化しており、円の中心へ向かう加速度が生じている。これを生むには中心へ向かう力が必要で、走者は身体を内側へ傾け、足が地面を斜めに押すことで地面反力の向きを内側へ向けて得ている。「進む向きの変化は加速度ではないため、直線を走るときと力の要求に違いは生じない」は誤りで、向きの変化そのものが加速度であり、直線走とは異なる力が要る。「曲線の半径が小さいほど必要な力は小さくなるため、内側のレーンほど楽に走れる」は関係が逆で、半径が小さいほど必要な力は大きくなる。「身体を外側へ傾けて重心を支持基底面の外へ置くほど、曲線に沿った動きが保たれていく」も誤りで、外側へ傾けると曲線の外へ向かう側へ力が働き、コースから外れていく。
HINT 速さが変わらなくても、向きが変われば速度は変わっている。
- Q29#jg-bm-029
体格の大きい競技者ほど、体重あたりの筋力が小さくなりやすい理由の説明として最も適切なものはどれか。
- 1体格が大きいほど速筋線維の割合が下がるため、体重あたりの筋力も下がる
- 2筋力の大きさは体重の2乗に比例して増えるため、体重あたりで見ると下がる
- 3体重が増えるほど発揮できる筋力そのものが落ちるため、体重あたりでも落ちる
- 4筋力は筋の断面積に、体重は体積におおむね比例するため、体重の増え方が上回る正解
Answer
正解 4:筋力は筋の断面積に、体重は体積におおむね比例するため、体重の増え方が上回る
筋が発揮できる力は筋の横断面積におおむね比例し、断面積は長さの2乗に比例して増える。一方で体重はおおむね体積に対応し、体積は長さの3乗に比例して増える。したがって体格が大きくなるほど体重の増え方が筋力の増え方を上回り、体重あたりの筋力は小さくなりやすい。「体格が大きいほど速筋線維の割合が下がるため、体重あたりの筋力も下がる」は誤りで、線維組成は体格の大きさで決まるものではない。「筋力の大きさは体重の2乗に比例して増えるため、体重あたりで見ると下がる」も誤りで、体重の2乗に比例して増えるなら体重あたりの筋力はかえって大きくなる。「体重が増えるほど発揮できる筋力そのものが落ちるため、体重あたりでも落ちる」も誤りで、体格が大きいほど発揮できる筋力の絶対値は大きくなる。
HINT 太さは2乗で増え、重さは3乗で増える。増え方の速さが違う。
- Q30#jg-bm-030
身体の一部に同じ大きさのトルクを加えたときの、回転の立ち上がりに関する説明として最も適切なものはどれか。
- 1角加速度はトルクを慣性モーメントにかけた値なので、慣性モーメントが大きいほど速い
- 2慣性モーメントが小さいほど角加速度は大きくなり、回転の立ち上がりが速い正解
- 3角加速度は関節の可動域が広いほど大きくなるため、柔軟性の高い者ほど立ち上がりが速い
- 4角加速度はトルクが作用した時間の長さで決まるので、作用の短い動作ほど小さくなる
Answer
正解 2:慣性モーメントが小さいほど角加速度は大きくなり、回転の立ち上がりが速い
回転の運動では、加えたトルクを慣性モーメントで割った値が角加速度になる。したがって同じトルクでも、慣性モーメントが小さいほど角加速度は大きく、回転の立ち上がりが速くなる。脚を畳んで振り出すほど素早く振れるのはこのためである。「角加速度はトルクを慣性モーメントにかけた値なので、慣性モーメントが大きいほど速い」は誤りで、角加速度はトルクを慣性モーメントで割って求める。「角加速度は関節の可動域が広いほど大きくなるため、柔軟性の高い者ほど立ち上がりが速い」は、角加速度と無縁の要素を持ち込んでいる。可動域の広さは動かせる範囲の話であって、回転の立ち上がりを決めるのはトルクと慣性モーメントである。「角加速度はトルクが作用した時間の長さで決まるので、作用の短い動作ほど小さくなる」も誤りで、トルクが働いた時間の長さは角運動量の変化量(角力積)に関わる量で、角加速度そのものはトルクと慣性モーメントだけで定まる。
HINT 同じ力でも、重さがどこにあるかで回り出しの速さが変わる。
- Q31#jg-bm-031
ベンチプレスのように挙げ終わりで動作が止まる種目における、バーベルの速度の推移に関する説明として最も適切なものはどれか。
- 1挙上の後半には減速の局面が生じるため、可動域の全体で加速し続ける刺激は得にくい正解
- 2挙上の後半ほど速度は上がり、可動域の終わりで最大の加速が得られる
- 3挙げ始めの加速が大きいほど後半まで加速が続いていくので、減速の局面は生じにくくなる
- 4減速の局面は軽い重量を扱うときだけ生じるため、高重量では終わりまで加速できる
Answer
正解 1:挙上の後半には減速の局面が生じるため、可動域の全体で加速し続ける刺激は得にくい
挙げ終わりでバーベルが止まる種目では、動作の終わりに向けて速度をゼロへ落とさなければならないため、挙上の後半に必ず減速の局面が入る。したがって可動域の全体で加速し続ける刺激は得にくく、素早い力の発揮を狙うときは投げる・跳ぶ動作や、重量を身体から離して放出するウエイトリフティング系の種目を用いることがある。「挙上の後半ほど速度は上がり、可動域の終わりで最大の加速が得られる」は誤りで、止まる動作では終わりに向けて速度が落ちる。「挙げ始めの加速が大きいほど後半まで加速が続いていくので、減速の局面は生じにくくなる」も誤りで、動き始めで速度を上げるほど、止まるまでに落とす速度も大きくなる。「減速の局面は軽い重量を扱うときだけ生じるため、高重量では終わりまで加速できる」も誤りで、止まる動作であれば重量の大小にかかわらず減速の局面は生じる。
HINT 最後に止まるのだから、どこかで必ず速度を落としている。
- Q32#jg-bm-032
関節角度の変化にともなって、その種目で発揮できる力の大きさが変わる関係(筋力曲線)の説明として最も適切なものはどれか。
- 1筋力曲線は種目ではなく個人ごとに定まるため、同じ種目でも人によって型が変わる
- 2筋力曲線は扱う負荷が軽いときは上昇型、重いときは下降型へ入れ替わる
- 3筋力曲線は関節角度ではなく、動作の速度に対して力の大きさを描いたものである
- 4可動域のどこで大きな力を発揮できるかは種目によって違い、上昇型や下降型などに分かれる正解
Answer
正解 4:可動域のどこで大きな力を発揮できるかは種目によって違い、上昇型や下降型などに分かれる
ある種目で発揮できる外的な力の大きさは、関節角度によってモーメントアームや筋の長さが変わるために可動域の中で一定にならない。その変化の仕方は種目によって違い、動作の終わりに近づくほど大きな力を出せる上昇型、はじめのほうで大きな力を出せる下降型、中間で最大になる型などに分かれる。「筋力曲線は種目ではなく個人ごとに定まるため、同じ種目でも人によって型が変わる」は誤りで、型を決めているのは種目の姿勢と関節角度による力学的な条件であって、個人差は型そのものを入れ替えない。「筋力曲線は扱う負荷が軽いときは上昇型、重いときは下降型へ入れ替わる」も誤りで、型を分けているのは種目の力学的な条件であり、負荷を軽重させても型は入れ替わらない。「筋力曲線は関節角度ではなく、動作の速度に対して力の大きさを描いたものである」は横軸を取り違えており、速度に対して力を描いたものは力ー速度関係のほうである。
HINT 同じ種目でも「きつい角度」は決まっている。その並びの形を種目ごとに見る。
- Q33#jg-bm-033
力学で扱う「質量」と「重さ(重力)」の関係として、最も適切なものはどれか。
- 1質量と重さは同じ量であり、キログラムで表すかニュートンで表すかという単位の違いである
- 2質量は物体そのものの量を表し、重さは質量に重力加速度をかけて得られる力である正解
- 3同じ物体を月面へ持っていった場合、質量は小さくなり、重さはもとの値を保つ
- 4重さは質量を重力加速度で割って得られる量であり、質量より小さな値になる
Answer
正解 2:質量は物体そのものの量を表し、重さは質量に重力加速度をかけて得られる力である
質量は物体そのものに備わる量で、場所が変わっても同じ値をとり、キログラムで表す。重さは物体に働く重力という力で、質量に重力加速度をかけて求められ、ニュートンで表す。「質量と重さは同じ量であり、キログラムで表すかニュートンで表すかという単位の違いである」は、一方が物体の量、もう一方が力であるという違いを落としている。「同じ物体を月面へ持っていった場合、質量は小さくなり、重さはもとの値を保つ」は誤りで、場所が変わっても同じ値をとるのは質量のほうであり、重力加速度が小さい月面では重さが小さくなる。「重さは質量を重力加速度で割って得られる量であり、質量より小さな値になる」も誤りで、かけ算と割り算が取り違えられている。
HINT 宇宙へ行っても変わらないのはどちらで、変わるのはどちらか。
- Q34#jg-bm-034
動作の分析で用いるキネマティクス(運動学)とキネティクス(運動力学)の違いとして、最も適切なものはどれか。
- 1どちらも力やトルクを扱う分析であり、二次元で行うか三次元で行うかという違いである
- 2キネマティクスは静止した姿勢の計測を指し、キネティクスは動いている最中の計測を指す
- 3キネマティクスは動きそのものの記述を扱い、キネティクスは力やトルクを扱う正解
- 4キネマティクスは計測した値を指し、キネティクスは計算で求めた値を指している
Answer
正解 3:キネマティクスは動きそのものの記述を扱い、キネティクスは力やトルクを扱う
キネマティクスは位置・速度・加速度や関節角度といった、動きそのものの記述を扱う領域で、映像からの座標の計測などで得られる。キネティクスは、その動きを生んでいる力・トルク・力積といった力の側を扱う領域で、床反力の計測や逆動力学的な計算によって求める。「どちらも力やトルクを扱う分析であり、二次元で行うか三次元で行うかという違いである」は誤りで、二次元か三次元かは計測の次元の違いであって両者を分ける基準ではない。「キネマティクスは静止した姿勢の計測を指し、キネティクスは動いている最中の計測を指す」も誤りで、どちらも動作中を対象にできる。「キネマティクスは計測した値を指し、キネティクスは計算で求めた値を指している」も誤りで、キネマティクスの値も計算で求めることがあり、力の計測も直接行える。
HINT 動きを描くのか、その動きを生んだ力を扱うのか。
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