運動と医学の板書
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第11回「外傷と障害—現場で起きることと、復帰の段取り」
この回は、整形外科的な外傷と障害を扱います。外傷と障害の違い、肉離れ・足関節捻挫・前十字靱帯の術後・脳振盪の復帰の進め方、腱の慢性障害と負荷の調整、急性と慢性の負荷の比、成長期に多い障害、そして動かすのを止めて医療につなぐ場面までを並べます。診断は扱いません。
数えるのは、この3つ
復帰を進める物差し
1つ(満たした条件)
肉離れの戻し方
4段(等尺→短縮→伸張→競技)
腱の痛みを見る時点
2つ(運動中・翌朝)
- 復帰を進める物差し:経過した日数を数えることではなく、その段階で満たすべき条件を満たしたかどうか
- 肉離れの戻し方4段(よく使われる組み方):等尺性→短縮性→伸張性→競技動作
- 腱の慢性障害で見る2つの時点:運動中の痛みと、翌朝の痛み
①2つの起こり方2節
一発で起きるか、積み重なって起きるか
- 外傷=一回の大きな外力で生じる
- 障害=繰り返しの負荷が蓄積して生じる
疲労骨折は、初期は運動のときだけ痛む
- 繰り返しの負荷が骨に蓄積して生じる
- 初期は運動のときだけ痛む。休むと引くので見逃しやすい
②復帰の考え方6節
動かしてよいかは医療、どう動かすかが指導者
- 動かしてよいかは医療が決める
- どう動かすかを指導者が組む。段は条件で上がる
- 入口の線:動かしてよいかどうかは医療が決める。どう動かすかを指導者が組む
- 段を上がる条件は、日数を数えることではなく、その段階でやるべきことが痛みなくできるかどうか
- ただし靱帯や腱をつないだ後は別で、経過時間そのものも条件のひとつになる。「条件で進める」は「時間を無視してよい」ではない
起きるのは、伸ばされながら強く働く局面
- 起こりやすいのは伸張性収縮で大きな張力がかかる局面
- 典型は全力疾走の、脚を前に振り出す終わりのあたり
等尺性→短縮性→伸張性→競技動作
- 等尺性→短縮性→伸張性→競技動作の順に上げる
- 受傷した局面を、最後に戻す
- 痛みが戻ったらひとつ前の段へ。日数で押し上げない
落ち着いたら、動きと力を戻してからバランスへ
- 落ち着いたら可動域→筋力→バランスの順に戻す
- 次に方向転換の負荷を段階的に増やして競技へ
- 段階は3つ。第一段階=患部の保護と安静・冷却・圧迫・挙上、第二段階=固くなった足首を柔らかくして動きを良くし、足首周囲の筋力を取り戻す、第三段階=バランス訓練と、ジョギング・ダッシュ・ストップ・方向転換
- まっすぐ走れたから復帰、とはしない。捻挫が起きるのは切り返す場面のほう
出典
見るのは、左右をそろえた数字
- けがをしていない側と、した側を比べる
- 比べるのは筋力と片脚で跳んだ距離
- 復帰の可否は医療の判断。こちらは数字をそろえて渡す
- つないだ腱は時間そのものが条件。年単位で強くなる
- 比べるのは左右差(筋力と片脚で跳んだ距離)。数字を同じ条件でそろえて渡すところまでが指導者側で、復帰の可否そのものは医療の判断
- ただし靱帯や腱をつないだ後は、経過時間そのものも条件になる。再建した腱の強度は手術後初期に低下し、1〜2年の歳月をかけて正常と同等に戻ると考えられているため、スポーツ復帰には手術からおおよそ6〜9か月以上かかるとされる
出典(2件)
症状を悪化させない範囲から、すぐ始める
- 完全な休みは取らない。悪化させない範囲から
- 各段階に最低24時間。段階の中身は団体ごと
- 症状が戻ったら24時間休み、前の段へ
- 開始条件は「無症状」ではなく「症状を悪化させない範囲」。フェーズ1は10分間の歩行などの日常活動から始める。完全な休息(コクーニング)は取らない
- 次の段階へ進む条件は「活動前の症状の悪化や追加的な症状の発現がなく、活動に耐えられる」こと。全段階を無症状で終えた時点で、試合への復帰が医学的に許可される
- 各段階に最低24時間という間隔は国際的に共通。段階の数と中身は競技団体ごとに違う
- ここで例に挙げた手順では、各段階は少なくとも1回のトレーニングを含み、最低でも24時間かけて行うこと、練習中や練習後に症状が悪化または再発した場合は少なくとも24時間休息し、症状のなかった段階に戻ってプログラムを続けることが示されている
出典(2件)
③腱の慢性障害2節
完全に休むことだけが答えではない
- 見るのは運動中の痛みと翌朝の痛みの2つ
- 2つを見て維持するか、軽くするかを決める
最近の負荷を、それ以前の平均と比べる
- 直近の負荷÷それ以前の一定期間の平均的な負荷
- ねらいは急な増加をつかまえること
- 急な増加を見る指標。ただし予測できるかは議論中
- ACWR(急性:慢性ワークロード比)=直近の負荷÷それ以前の一定期間の平均的な負荷。ねらいは総量ではなく、急な増加をつかまえること
- この比で障害を予測できるかは議論が続いている。無作為に作った慢性負荷で割っても同様の関連が出るという批判があり、枠組みとしての妥当性が問われている。閾値をそのまま使わず、総量と合わせて見る
出典
- 出典:Impellizzeri et al.,Sports Medicine 2021「What Role Do Chronic Workloads Play in the Acute to Chronic Workload Ratio?」
④腰4節
成長期の腰痛には、腰椎の疲労骨折がある
- 腰椎分離症=腰椎の一部に生じる疲労骨折
- 誘因は腰を反らす・ひねる動作の繰り返し
オスグッドは、膝の「下」が腫れて痛む
- 痛むのは膝のすぐ下の骨の出っ張り。腫れを伴う
- 活動量の多い子どもに多い
目安は、年代が下がるほど低い
- 投球数の目安は年代ごとに違う。一律ではない
- 年代が下がるほど、1日の上限は低く設定されている
動作を仕上げてから、負荷を上げる
- まず自体重や軽い負荷で動作を覚えさせる
- 習熟に応じて負荷を高める。禁止でも、いきなり高負荷でもない
⑤股関節の前3節
深くしゃがむ競技の、股関節前面の痛み
- 深い屈曲を繰り返す競技で、股関節の前が痛む
- 骨どうしのぶつかり合いが関わる障害が知られている
蹴られた感じのあと、つま先で立てない
- 踏み切りで蹴られたような衝撃→つま先立ちができない
- うつ伏せでふくらはぎを握る。固定して受診につなぐ
- 手がかりは、踏み切りやジャンプで蹴られたような衝撃→その後つま先で立てない。歩けることは、切れていないことの証明にならない
- 確かめ方は荷重させない。うつ伏せで膝を直角に曲げてふくらはぎを握ると、正常では足関節が底屈するが、断裂しているとこの底屈がみられない(Thompsonテスト陽性)。断裂部に陥凹を触れることもある
- 手術をした場合でも、スポーツ復帰には少なくとも5〜6か月程度を必要とするとされる
出典
けがの覚えがなく、広く動かず、夜に痛む
- けがの覚えがない/広い範囲で動かない/夜間に痛む
- 痛みを押して広げない。動かし方は受診のうえで
- 手がかりは3つ。けがの覚えがない/肩を上げる動きが広い範囲で制限される/夜間に痛む。中高年に多い
- 同じ3つは腱板の損傷など他の原因でも出るため、ここで原因を決めない
- 痛みの強い時期は三角巾などで肩を安静に保つことが勧められる場合がある。温熱や運動を始める時期も含め、動かし方は受診したうえで決める
出典
この回の要点
- 一発か、積み重ねか。積み重ねは設計で減らせる
- 復帰の段は満たした条件で上がる。戻ったら下げる
- 増やし方そのものも見る。跳ね上がりに注意
- 動かしてよいかは医療、どう動かすかが指導者
読んだら、解いて確かめる
聞いて分かったつもりのところは、解くとはっきりします。間違えた問題だけが自動で復習に戻り、2回連続で正解すると外れます。
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JATI認定トレーニング指導者(JATI-ATI)一般科目の板書(公式テキストの章立て順)。
公式テキストの本文は使っていません。章題とページ数は目次から転記した事実、内容は公的機関の公開資料と教科書水準の一般知識にもとづいています。章ごとの出題数は公表されていません。