運動生理学全13問・正解と解説つき
JATI認定トレーニング指導者(JATI-ATI)一般科目 ・ 公式テキスト第4章 ・ 分量 14%
呼吸循環器系とエネルギー代謝、骨格筋系・神経系・内分泌系と運動。トレーニングによる生理学的な適応。
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- Q01#jg-ph-001
最大努力で10秒以内に終わる運動において、主たるエネルギー供給機構はどれか。
- 1解糖系(乳酸性機構)
- 2有酸素系(酸化機構)
- 3脂質の β酸化
- 4ATP-CP系(非乳酸性機構)正解
Answer
正解 4:ATP-CP系(非乳酸性機構)
最大努力で10秒以内に終わる運動では、筋内のATPとクレアチンリン酸を用いるATP-CP系が主たる供給機構となる。供給の速さが最も大きいかわりに貯蔵量が限られるため、持続できる時間は短い。「解糖系」は数十秒から1分程度の運動で寄与が大きくなる。「有酸素系」は供給の速さが最も遅く、長時間の運動で中心となる。「脂質のβ酸化」は有酸素系の中の脂質を用いる経路で、供給はさらに緩やかであり短時間高強度の運動の主体にはならない。なお3つの機構は常に並行して働いており、強度と時間によって寄与の割合が変わる。
HINT 「切り替わる」のではなく「割合が変わる」。どの強度でも3つとも動いている。
- Q02#jg-ph-002
高強度の短時間運動を繰り返す際、セット間の休息を十分にとる主な目的はどれか。
- 1心拍数を安静時まで戻し、有酸素系の関与をなくすため
- 2クレアチンリン酸の再合成を進め、次のセットでも高い出力を発揮できるようにするため正解
- 3血中の乳酸濃度を高く保ち、次のセットの刺激を強めるため
- 4筋温を下げて、筋の収縮速度を抑えるため
Answer
正解 2:クレアチンリン酸の再合成を進め、次のセットでも高い出力を発揮できるようにするため
高強度の短時間運動ではATP-CP系の寄与が大きく、消費されたクレアチンリン酸は休息中に有酸素的に再合成される。パワーやスピードを目的とする場合、この再合成を待って高い出力を保つためにセット間の休息を長めにとる。「血中の乳酸濃度を高く保ち、次のセットの刺激を強める」は、筋肥大を狙って休息を短くする考え方とは別で、出力を保つ目的とは相反する。「筋温を下げて、筋の収縮速度を抑える」は、力の発揮にとって不利であり目的にならない。「心拍数を安静時まで戻し、有酸素系の関与をなくす」も誤りで、クレアチンリン酸の再合成はまさに有酸素的な過程による。
HINT 「パワー狙いは長い休息、筋肥大狙いは短い休息」。同じ種目でも休息で目的が変わる。
- Q03#jg-ph-003
運動時の乳酸に関する説明として正しいものはどれか。
- 1乳酸は有酸素系が働いているときにのみ産生され、高強度運動では産生されない
- 2血中乳酸濃度は運動を止めた直後から数時間にわたり上昇を続ける
- 3乳酸は他の筋や心筋、肝臓でエネルギー源として利用され、疲労の原因物質とは言い切れない正解
- 4乳酸は筋に蓄積したまま利用されることはなく、疲労の唯一の原因である
Answer
正解 3:乳酸は他の筋や心筋、肝臓でエネルギー源として利用され、疲労の原因物質とは言い切れない
乳酸は解糖系の過程で生じ、産生された後は他の筋や心筋、肝臓へ運ばれてエネルギー源として利用される。かつては疲労の原因物質と説明されたが、現在では疲労を乳酸だけで説明することはできないと考えられている。「筋に蓄積したまま利用されることはなく、疲労の唯一の原因」はこの点を取り違えている。「有酸素系が働いているときにのみ産生され、高強度運動では産生されない」は逆で、高強度運動ほど解糖系の寄与が増して産生量が多くなる。「運動を止めた直後から数時間にわたり上昇を続ける」も誤りで、運動後は数分から数十分かけて低下していく。
HINT 「乳酸=疲労物質」は古い説明。指導の現場で言い換えを求められることがある論点。
- Q04#jg-ph-004
持久的トレーニングによって最大酸素摂取量が高まる主な要因はどれか。
- 1一回拍出量の増加による心拍出量の増大正解
- 2最大心拍数の上昇による心拍出量の増大
- 3肺活量の増加による換気量の増大
- 4安静時心拍数の上昇による循環の促進
Answer
正解 1:一回拍出量の増加による心拍出量の増大
持久的トレーニングによる最大酸素摂取量の向上は、主に心室が大きくなることなどによる一回拍出量の増加と、それに伴う心拍出量の増大によって説明される。「最大心拍数の上昇」は誤りで、最大心拍数はトレーニングによってほとんど変わらず、むしろわずかに低下することもある。「肺活量の増加による換気量の増大」も誤りで、健常者では換気が最大酸素摂取量の制限要因になることは少ない。「安静時心拍数の上昇」も逆で、持久的トレーニングでは一回拍出量の増加を反映して安静時心拍数はむしろ低下する。
HINT 持久力の頭打ちは「肺で入らない」より「心臓が送れない」で決まる。適応も心臓側に出る。
- Q05#jg-ph-005
無酸素性作業閾値(AT)や乳酸性作業閾値(LT)が持久的トレーニングの指標として重視される理由はどれか。
- 1最大酸素摂取量が同じでも、閾値の高さによって持続できる運動強度が変わるため正解
- 2閾値は最大酸素摂取量と完全に一致するため、どちらか一方を測れば足りるため
- 3閾値は遺伝によって決まりトレーニングでは変化しないため、体質の判定に使えるため
- 4閾値は安静時の測定だけで求められ、運動負荷を必要としないため
Answer
正解 1:最大酸素摂取量が同じでも、閾値の高さによって持続できる運動強度が変わるため
最大酸素摂取量が同じ者どうしでも、ATやLTが高いほど高い強度を長く維持できるため、持久的な競技力とよく対応する。トレーニングによって最大酸素摂取量が頭打ちになった後も閾値は向上しうる点でも、指標としての意味が大きい。「閾値は最大酸素摂取量と完全に一致する」は誤りで、両者は別の指標である。「遺伝によって決まりトレーニングでは変化しない」も誤りで、閾値はトレーニングによって向上する。「安静時の測定だけで求められ、運動負荷を必要としない」も誤りで、漸増負荷運動中の呼気ガスや血中乳酸の測定を要する。
HINT 「最大」より「どこまで粘れるか」。マラソンのような種目ほど閾値の意味が大きい。
- Q06#jg-ph-006
速筋線維(タイプⅡ)を優先的に動員するための条件として最も適切なものはどれか。
- 1低い強度でゆっくりと、長い時間をかけて行う
- 2強度を問わず、動作の可動域を狭くして行う
- 3セット間の休息を長くとり、疲労を残さないようにする
- 4高い強度で行うか、もしくは疲労が進んで動員が進んだ状態にする正解
Answer
正解 4:高い強度で行うか、もしくは疲労が進んで動員が進んだ状態にする
運動単位はサイズの原理にしたがって小さいもの(遅筋線維を支配)から動員されるため、速筋線維を動員するには高い強度で大きな力を求めるか、低強度でも疲労が進んで動員が上位まで及ぶ状態にする必要がある。「低い強度でゆっくりと、長い時間をかけて行う」だけでは遅筋線維の動員にとどまりやすい。「動作の可動域を狭くして行う」は動員とは関係がない。「セット間の休息を長くとり、疲労を残さないようにする」は、パワーの発揮には適するが、疲労による動員の進行という経路は使えなくなる。
HINT 低負荷でも「限界まで」やれば速筋は動員される。高重量が使えない対象者への代替になる。
- Q07#jg-ph-007
遅筋線維(タイプⅠ)と速筋線維(タイプⅡ)の特徴の組み合わせとして正しいものはどれか。
- 1遅筋線維はミトコンドリアと毛細血管に富み疲労しにくく、速筋線維は収縮速度が速く大きな力を出せる正解
- 2遅筋線維は収縮速度が速く大きな力を出せ、速筋線維はミトコンドリアに富み疲労しにくい
- 3遅筋線維も速筋線維も酸化能力は同じで、収縮速度だけが異なる
- 4速筋線維はミオグロビンを多く含むため赤く見え、遅筋線維は白く見える
Answer
正解 1:遅筋線維はミトコンドリアと毛細血管に富み疲労しにくく、速筋線維は収縮速度が速く大きな力を出せる
遅筋線維はミトコンドリアと毛細血管に富み、ミオグロビンを多く含んで酸化能力が高く、収縮速度は遅いが疲労しにくい。速筋線維は解糖系の能力が高く、収縮速度が速く大きな力を発揮できるが疲労しやすい。「遅筋線維は収縮速度が速く大きな力を出せ」は両者が入れ替わっている。「酸化能力は同じで、収縮速度だけが異なる」は、酸化能力の違いという重要な差を落としている。「速筋線維はミオグロビンを多く含むため赤く見え」も逆で、ミオグロビンが多く赤く見えるのは遅筋線維である。
HINT ミオグロビンが多い=赤い=遅筋。魚の赤身と白身と同じ理屈で覚えられる。
- Q08#jg-ph-008
レジスタンストレーニングによる筋肥大に関する説明として正しいものはどれか。
- 1筋を包む筋膜が厚くなることが主体で、筋線維そのものは変化しない
- 2筋線維1本1本の断面積が増えることが主体で、筋線維の数が大きく増えるわけではない正解
- 3筋線維の数が増えることが主体で、1本1本の断面積はほとんど変わらない
- 4筋線維の長さが伸びることが主体で、断面積は変わらない
Answer
正解 2:筋線維1本1本の断面積が増えることが主体で、筋線維の数が大きく増えるわけではない
ヒトにおける筋肥大は、筋線維1本1本の断面積が増えることが主体であり、筋線維の数そのものが大きく増えること(過形成)は明確に示されていない。最大筋力が生理学的横断面積とよく対応するのも、この点と整合する。「筋線維の数が増えることが主体」はこの点を取り違えている。「筋線維の長さが伸びることが主体で、断面積は変わらない」も誤りで、筋節の直列付加による長さの変化は起こりうるものの肥大の主体ではない。「筋膜が厚くなることが主体で、筋線維そのものは変化しない」も誤りである。
HINT 「本数は増えない、1本が太くなる」。だから断面積が筋力の指標になる。
- Q09#jg-ph-009
レジスタンストレーニングに対する内分泌系の急性応答として、一般に報告されているものはどれか。
- 1いずれのホルモンも分泌に変化はなく、内分泌系は関与しない
- 2インスリンの分泌のみが高まり、他のホルモンは変化しない
- 3成長ホルモンやテストステロンの分泌が高まり、コルチゾールも上昇する正解
- 4成長ホルモンとテストステロンの分泌が低下し、コルチゾールのみが上昇する
Answer
正解 3:成長ホルモンやテストステロンの分泌が高まり、コルチゾールも上昇する
レジスタンストレーニングの直後には、成長ホルモンやテストステロンといった同化に関わるホルモンの分泌が高まるとともに、ストレス応答としてコルチゾールも上昇することが報告されている。同化と異化の両方向のホルモンが同時に動く点が要点で、回復の確保が重要になる理由の一つでもある。「成長ホルモンとテストステロンの分泌が低下し」は方向が逆である。「いずれのホルモンも分泌に変化はなく」は、繰り返し報告されている応答を否定している。「インスリンの分泌のみが高まり」も誤りで、運動中はむしろインスリンの分泌は低下する。
HINT 同化と異化が同時に動くから「やりっぱなし」は効かない。休養と栄養が効果を分ける。
- Q10#jg-ph-010
持久的トレーニングによって骨格筋に生じる適応として正しいものはどれか。
- 1速筋線維の断面積が著しく増大し、遅筋線維は減少する
- 2ミトコンドリアの数と大きさが増え、毛細血管密度が高まり、脂質の利用能力が向上する正解
- 3ミトコンドリアの数が減り、解糖系の酵素活性だけが高まる
- 4毛細血管密度が低下し、筋への酸素供給が減る
Answer
正解 2:ミトコンドリアの数と大きさが増え、毛細血管密度が高まり、脂質の利用能力が向上する
持久的トレーニングによって骨格筋では、ミトコンドリアの数と大きさが増え、酸化系の酵素活性が高まり、毛細血管密度が増して酸素と基質の供給が改善する。あわせて脂質を利用する能力が高まり、同じ強度での糖質の消費が抑えられる。「ミトコンドリアの数が減り、解糖系の酵素活性だけが高まる」は適応の方向が逆である。「毛細血管密度が低下し、筋への酸素供給が減る」も逆である。「速筋線維の断面積が著しく増大し」はレジスタンストレーニングでみられる変化であり、持久的トレーニングの典型的な適応ではない。
HINT 持久力の適応は「筋の中の工場(ミトコンドリア)と道路(毛細血管)を増やす」こと。
- Q11#jg-ph-011
運動後に酸素摂取量が安静時の水準まですぐには戻らない現象(運動後過剰酸素消費)の説明として正しいものはどれか。
- 1クレアチンリン酸の再合成、体温や心拍数の回復、ホルモンの作用などのために酸素が使われ続けるため正解
- 2運動中に不足した酸素を、運動後にまとめて肺へ取り込んで貯蔵するため
- 3運動後は換気だけが亢進し、実際の酸素の消費は安静時と変わらないため
- 4筋に蓄積した乳酸がすべて尿として排泄されるまで、酸素が消費され続けるため
Answer
正解 1:クレアチンリン酸の再合成、体温や心拍数の回復、ホルモンの作用などのために酸素が使われ続けるため
運動後も酸素摂取量が高い状態が続くのは、消費されたクレアチンリン酸の再合成、上昇した体温や心拍数の回復、換気筋の仕事、カテコールアミンなどホルモンの作用が続くことなど、複数の要因のために酸素が使われ続けるためである。「運動中に不足した酸素を、運動後にまとめて肺へ取り込んで貯蔵する」は誤りで、酸素を貯蔵する仕組みはこの現象の説明にならない。「換気だけが亢進し、実際の酸素の消費は安静時と変わらない」も誤りで、酸素摂取量そのものが高い。「乳酸がすべて尿として排泄されるまで」も誤りで、乳酸は主にエネルギー源として利用される。
HINT 運動後もエネルギーを使い続ける。減量指導で「運動直後だけが勝負ではない」と言える根拠。
- Q12#jg-ph-012
オーバートレーニング症候群の早期に現れやすい徴候として最も適切なものはどれか。
- 1安静時心拍数の上昇、睡眠の質の低下、意欲の低下、パフォーマンスの停滞正解
- 2安静時心拍数の低下、睡眠時間の延長、食欲の増進、体重の増加
- 3運動直後の一時的な筋肉痛と、翌日までに消える疲労感
- 4運動中の発汗量の増加と、運動後の速やかな心拍数の回復
Answer
正解 1:安静時心拍数の上昇、睡眠の質の低下、意欲の低下、パフォーマンスの停滞
オーバートレーニング症候群では、疲労が回復しないまま蓄積し、安静時心拍数の上昇、睡眠の質の低下、意欲の低下、易疲労感、パフォーマンスの停滞や低下といった徴候が慢性的に続く。日々の記録で早期に気づけるようにしておくことが予防につながる。「安静時心拍数の低下、睡眠時間の延長、食欲の増進」は、むしろ良好な適応や回復を示す方向の変化である。「運動直後の一時的な筋肉痛と、翌日までに消える疲労感」は通常の運動後の反応である。「運動後の速やかな心拍数の回復」も、回復能力が保たれていることを示す。
HINT 毎朝の安静時心拍数を記録させると早期に気づける。指導記録に組み込んでおく価値がある。
- Q13#jg-ph-013
遅発性筋痛(運動後しばらくしてから生じる筋の痛み)に関する説明として正しいものはどれか。
- 1短縮性収縮のみを行った運動の後に生じやすく、痛みは運動直後が最も強い
- 2乳酸が筋に残ることが唯一の原因であり、乳酸が消えると同時に痛みも消える
- 3遅発性筋痛が出ないトレーニングには効果がないため、毎回強い痛みを目標にする
- 4伸張性収縮を多く含む運動の後に生じやすく、痛みのピークは運動の翌日以降に現れる正解
Answer
正解 4:伸張性収縮を多く含む運動の後に生じやすく、痛みのピークは運動の翌日以降に現れる
遅発性筋痛は、筋が引き伸ばされながら力を発揮する伸張性収縮を多く含む運動の後に生じやすく、痛みは運動直後ではなく翌日以降にピークを迎える。「短縮性収縮のみを行った運動の後に生じやすく、痛みは運動直後が最も強い」は収縮様式も時間経過も誤りである。「乳酸が筋に残ることが唯一の原因」も誤りで、乳酸は運動後まもなく低下するため時間経過と合わず、現在この説明は否定されている。「遅発性筋痛が出ないトレーニングには効果がないため、毎回強い痛みを目標にする」も誤りで、筋痛の強さと効果は対応せず、強い筋痛は回復を妨げる。
HINT 「筋肉痛=効いた証拠」は誤り。慣れると出にくくなるが、効果がなくなるわけではない。
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